22 縁は禍福を糾う
「う、うっ、うまあああぁぁっ」
至福の声が響きわたる。
日は暮れ、あたりにはこうこうと提燈が燈されていた。春といえども、風は寒々しい。劇場の外にある階段に腰掛けて宮廷の
蒸したて熱々の
ふわり、じゅわ、ぷりぷり、とろっ、こりこりと、擬音が口のなかを跳ねまわる。さながら高級食材たちの華劇だ。旨くない、わけがなかった。
「こんな豪勢な
「ふ、よかったな」
ひとくちごとに歓喜に震える妙をみつめる累神の眼差しは暖かい。愛しむように眸を細めながら、彼はいった。
「ほかにも食べたい物があれば、なんでもいってくれ」
「なんでもですか!」
妙は想わず声をあげたが、まだまだ事件がもちこまれるのだと理解して、さあと青ざめた。旨い話には得てして、裏があるものだ。
最後のひとくちを惜しみつつ、口に放りこんでから、妙がひょいと腰をあげた。
「これっきりですってば! もう事件なんか、こりごりですから!」
「そうかな?」
階段を一段とばしに逃げていく
「あんたは逃げられないよ、……俺が逃がさないからな」
累神の遥か頭上で星がひと筋、流れた。運命が動きだす先触れのように。
人の
ただ、累神だけが不敵に微笑んでいた。
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これにて第一部完結となります。
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