19 女官占い師は舞台にあがる
劇場は日頃から帝族や政客を
傍聴を希望する観衆が
渡り
愛らしくも
「
女官に腕をひかれてきた華やかな嬪が舞台にならんだ。
瞳のない嬪と睨みあいながら、妙は語りだす。
「雨の、降り続ける晩だったそうですね。皆が寝静まった未明、嬪の
「そうね。そのとおりよ」
「ふむ――でも、奇妙ですね」
妙が瞳を細め、微笑を重ねた。
「ここにいる貴方こそが、ほかでもない
傍聴していた群衆たちも揃って、絶句した。だが、続けてあきれたように頭を振る。突拍子もない。神の
「なにを言いだすのかとおもえば。そんなはずがないでしょう、私は
そうだそうだと女官たちも頷きあった。
だが、妙は落ちついていた。
「そうでしょうか。似あう似あわないではなく、
「なにがいいたいのよ」
朝蘭嬪がついに怒りをにじませた。
「
「っ……不敬だわ! 被害者である私にそんな訳の解らない疑いをかけるなんて!」
「そう、被害者です。貴方は被害者だから、疑われませんでした。あの
激昂する
実際に視てきたものを語るかのように妙の言葉には、いっさいの惑いがなかった。これは推理ではない。事実を事実として報ずる響きだ。真実だけが持ちうる厳粛さというものが確と備わっている。
占い師を軽侮していた群衆が、段々と彼女の語りに圧倒されて絡めとられていく。もしかして神の宣託というのは真実なのではないか。そう想わずにいられない重みが、その言葉の端々から滲んでいた。
「違うというのでしたら、その眼を覆っている包帯を解いてください。傷はとうに癒えているはずです。だって、貴方は瞼に傷をつけただけなんですから」
彼女は医官の診察を拒否し続けていたという。崩れた顔を、男に視られたくないからと。だが、ほんとうに失明する程の傷ならば、恥等とはいってはいられないはずだ。
「いやよ、ぜったいにいや」
朝蘭嬪が頑なに拒絶する。だが強く拒絶するほどに疑いの視線が増える。
観衆からついに声があがった。
包帯を解け――斬られたのが真実ならば、なにを臆することがあると。
それは徐々に、熱を帯びた大合唱になる。
朝蘭嬪が唇をかみ締めながら、刺繍の施された包帯に指を掛けた。絹が解ける。
綺麗な瞼が、表れた。
「さ、幸いなことに傷が浅かったの。それだけよ……」
微かにかさぶたが残っているが、傷はあきらかに眼球には達していなかった。
「瞳はひらきますね?」
握り締めた指の震えから、激しい葛藤が窺えた。つまさきがあがってはまた落ちて、腹を括ったのか、
刹那、彼女はか細い悲鳴を洩らした。
青い瞳が
「
客席の最も先頭には青ざめた
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