18「人なんか裏があってなんぼ」
専属占い師に神の
三日後、
第一皇子直々の報せということもあって、
「やっと、着替えが終わったのか」
女官たちと入れ替えに
華やいだ袖をはためかせ、
「なんだって、こんな格好しないといけないんですか!」
緋の絹で織られた
「第一皇子つきの占い師が女官服をきてたんじゃ、格好がつかないだろう。それにあんたがいったんじゃないか。印象は大事だと」
「それは、華やかに飾りたてても、様になる人の話ですよ」
つけたこともない紅を挿して、額には
「だったら、問題ないな」
「綺麗だよ、あんた」
これまでいわれたこともないような言葉にかっと頬が熱を帯びる。この男には毎度調子を崩されてばかりだ。妙は胸のうちで毒づきながら、はいはいと振りはらった。
「例の彼には、ちゃんと声をかけてくれましたか」
「ああ、第一皇子の権限をつかって、有給にさせた」
「え、そんなんできるんですか。私も今度、有給にしてくれません?」
累神は肩を竦めてから、ぽつといった。
「しかし、人の
「そうですかね。人なんか裏があってなんぼですよ。誰かを想いやるから、嘘をつくこともあれば、取り繕うこともあります。ほんとにおぞましいのは、表も裏もなくなった時ですよ」
「そういうものか」
「そういうものです」
間もなく開演だ。
「いいんですか。私の推理が違っていたら、貴方が大恥をかくことになりますよ」
「そうだな。けど、あんたは――はずさない。ぜったいにだ」
「神も祖霊もついてないのに?」
「だからだよ」
みているだけでも胸を締めつけられるような笑いかただった。そんなふうに微笑まれたら、腹を
「どうせだったら、神サマまで欺いてこい」
言われるまでもなく、とばかりに妙が唇をひき結んで踏みだす。
占い師は舞台にあがった。
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