17 飯うまと認知バイアスによる心理分析
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「うっまああああぁ、にはぁ」
瞳を潤ませて、妙は歓喜の声をあげる。
「ほんと、旨そうに食うな、あんた」
「いやあ、絶品ですからねえ。都にはここまでうまい拉麺屋はありませんよ」
これは
「めっちゃおいしかったです、ああ、お腹がくちたあ」
拉麺を食べ終え、妙は声を落として本題に移る。
「あ、そうそう――
「朝蘭嬪が?」
「事件の証言にいくつか、嘘があります」
最も疑わしいのは
「朝蘭嬪は侵入者は男だと言いきっていますが、……どうにも疑わしいんですよね。息遣いで男だとわかったと証言していましたが、眼を斬られた直後、息遣いにまで意識をはらえるでしょうか。私は無理ですね」
そして彼女が
「だが、彼女は事件の被害者だろう。なぜ、嘘をつく必要があるんだ」
「朝蘭嬪は紛れもなく被害者です。ですが加害者ではないという証拠もありません」
「どういうことだ」
累神が訳がわからないとばかりに眉根を寄せた。
「被害者は加害者ではない。という想いこみほど、危険なものはありません。人の認知は、かんたんにゆがむんですから。特に哀れみは認知をゆがませる最たるものです」
「認知はゆがむ、ね。それも心理か?」
「認知のゆがみというのは多様にありますが、この例だと……そうですね、貧しそうな姑娘と裕福そうな姑娘がいるときに物が盗まれたとしたら、まずは貧しそうな姑娘が疑われるじゃないですか。ほんとに貧しいかはわからなくとも」
認知とは狭い枠組みのなかでおこなわれるものだ。
「印象というと、まあ割と聴こえはいいですが、実際のところ人は想いこみのなかで他者を振り分けているところがあるわけです。華やかな服をきているひとは遊び好きだろうとか、おしとやかだから家庭的に違いないとか」
先程だって、そうだ。
そもそもですね、と
「なんで、瞳を潰されたのかが解からないんですよ。殺すつもりだったら喉を斬るなり、胸を刺すなりすればいいのに。そっちのほうが確実です。あるいは
どうしても瞳を傷つけなければならないわけが、あったのだろうか。
「瞳か。……確か、
先程すれ違った
「そういえば……知っていますか? 寒い地域にすむ民族って、雪を表す言葉だけでも二百通りほど使いわけているそうです。都では、雪は雪だっていうのに」
「へえ」
脈絡のない
「俺たちは一緒くたに青い瞳といっているが、同族からすれば違いがあるんじゃないかということか?」
「察しがいいですね」
認知や認識とは、親しんでいるものにたいしては細分されるものだ。
姐である
想いだせない。
彼女は絶えずうつむいて、
(ん、全部が違う……疑うべきはここじゃないか?)
前提からして疑うべきだったのだ。
些細な言葉のすれ違い、証言に織りまぜられた嘘、無意識のうちに滲みだす
「わかったのか」
「はい」
瞳を鏡のようにきらめかせて、妙が曇りのない声をあげた。
「
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