6 「貴方、嘘をつきましたね」
張りつめた空気が漂っていた。
日はすでに暮れかけて、軒に提げられた提燈が庭さきを照らしている。
庭に集められた女官たちは一様にうつむき、表情を強張らせている。無理もない。ただでさえ
運命の糸のような、それ。現実にはそのような浪漫あふれるものではない。
(あれは、
上級妃妾ともなれば、服はきまって絹だ。
事実、死に際にきていたのも白絹で
麻の服を着るのは
(彼女を殺害したのは、ここにいる女官の誰かに違いない)
「
「そ、それは……私です」
妙を呼びにきた
「
第一発見者は最も疑われやすい。
隣にいたそばかすの女官が眉を逆だてた。
「そんなこといって、あなたが殺したんじゃないの? 占い師の言葉に乗っかれば、娟様を殺しても疑われないとおもって。だから、占い師を呼びにいったんじゃないの」
「違います、
「言い争いはおやめ、みっともありませんよ」
年を経た蛙のような総白髪の女官がふたりを制す。
静かになってから、妙は気に掛かっていたことを尋ねる。
「ところで、なんで皆様揃って、占いのことをご存知なんですか」
老蛙のような女官がこたえる。
「
なるほど。だから
「
「着替えを補助する女官はいなかったのですか」
「
あの時にはすでに自害を考えていたのではないかと、女官は蛙のような顔をさらにつぶして、沈痛な面持ちになる。
「あの……たぶん、なんですが」
「
「まあ……」
年老いた女官が瞳を見張る。
妙は
「
妙にうながされ、
「私は
「ええ、左様です」
「食事の準備でおおいそがしでした」
他の女官たちも現場にいなかったことを証明しようと「裏庭の掃除をしていた」「洗濯をしていた」というが、
(ほんとうに裏庭で掃除をしていたかなんて、誰かと一緒じゃないかぎり、証明できない。重要なのは彼女らが嘘をついていないかどうか、だ)
妙は喋っている女官たちの様子を観察する。声の調子はどうか。視線はどこにむけているか。女官たちは一様に緊張で声の端々がうわずり、微かに震えている。
視線はきまって、左だ。
(でも、彼女だけは、視線を右に振った)
様子が違ったのは先ほど
彼女は昼から倉を掃除していたと証言した。女官たちの騒ぎを聞きつけて、庭にむかったら娟様はすでに命を絶っていたと。
証言そのものに問題はない。
「
(
「貴方、嘘をつきましたね」
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