3 訪れるは謎のイケメン宦官
「もう終わりなのか」
声をかけられ、振りかえる。
服と帽子からして
僅かに毒気を抜かれたが、妙は「ええ、まあ」とこたえる。
「ほら、降りだしてきましたし」
「残念です。心を視通す敏腕の占い師がいるときいて、わざわざきたんですが」
「晴れていたら、明日の昼頃にまた、ここでやりますけど」
「……
猫耳のかたちに結われた
「報酬は食べ物だときいて、餡がたっぷりとつまった最高級の
月餅というと、宮廷でも祭事の時にだけ食べられるという非常に高級な
「わかりました」
軒におかれていた
「視ましょう。お掛けになってください」
妙はいつになく真剣に鏡をなでる。
「ふむ、視えてきました。貴方様には今、悩みごとがあるようですね」
「へえ」
穏やかな微笑を続けていた男が、
「占い師さんは妙なことをいいますね。悩みごとのない人間などいるでしょうか? 少なくとも俺は逢ったことがありませんが」
言葉遣いだけは慇懃だが、棘がある。妙は愛想笑いでごまかす。
「そうですね。でも貴方様の抱えておられるものは、ずいぶんと重そうです。これほどの重荷を抱えておられる御方は、そうはおられませんよ」
「わかるんですか?」
「もちろんです。私には全部、解かります」
男は嬉しそうに眉の端をあげた。
「それはつまり、俺がどんな人間か、わかるということですね?」
「左様です。例えばですね」
いまだとばかりに妙が畳みかける。
「貴方様は非常に神経質なところがあるのに、時々大事なことを
「……」
男が黄金の
「曖昧な考察ですね。それこそ、誰にでも身におぼえがあることばかりだ」
妙は口端をひくつかせた。
(わあ、言い訳のしようもない)
だってこれは、そういうものだからだ。
敢えて細部を語らず、万人にあてはまることをいって、さも
だというのに。
この男、ずいぶんと敏い。
「貴方様は占いなんか
「はは、それこそ、ずるい質問だな。はいと答えても、いいえと答えても、あんたには都合がいい」
張りつけたような微笑を崩さないこの男がなにを考えているのか、まるで読めなかった。これだけ頭のまわる男がなぜ、占いなんかを受けにきたのか。
(私を試してる?)
先程の言葉を想いかえす。彼は「俺がどんな人間か、わかるか?」といった。
(素姓をあてろということか)
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