2 占い商売は大繁盛
花曇りでも後宮占い師は、満員御礼だった。
梅の季節は風のように過ぎて、いまは木蓮の盛りだ。
転んだ
「ふむふむ、
「ふふっ、やっぱりそうなのね! ねえ、
「よかったわね。貴女が嬉しいと、私も嬉しいわ」
「私もよ、姐様」
(占いなんかに通いつめないほうがほんとは健全だもんな)
後宮にきて、おもったことがある。
女の都は一見華やかだが、裏はどろどろとしていて
昨年の春だったか、皇帝が崩御した。
都では
だがそれにともなって、後宮の縮小も考えられるとのことで、妃妾たちは後宮にいられるうちに条件のよい男を捕まえようとがつがつしている。
約千五百もの妃妾がいるとあって、上級妃妾たちは日頃から競うように飾りたてていた。
「あの、だいじょうぶですか」
思わず、そう声をかけてしまった。
「なにか、わたくしの頭についていますか?」
「い、いえ……その」
ついているというか、乗っている。
占いの結果を喋りながらも、ついつい視線は彼女の頭に吸い寄せられてしまう。これではいけないと、妙は気を取りなおす。
「
「まあ。ほんとうにぴったり、あてられるんですね。そうなんです。
「ふむふむ、幼い頃から、息のつまる想いをなさってきたことでしょうね。一族の確執は根深いものです。御気に病まず、
「ああ、なんだか、胸のつかえが取れましたわ」
占い師の基本は御客の心に寄りそうことにある。私だけは全部、理解していますよといってあげれば、人は安堵する。
「ひとつ、ご相談なんですけれど。まもなく春の宴があるのです。緑の
「そうですね。風水による
「まあ、わたくしも緑がよいとおもっていたのです。嬉しい。これで御礼になるかしら」
花を象った
(なにせ、
報酬に食べ物を所望するのは、銭だと後宮内の商売として取り締まられるからだが、銭があっても妙は身を飾る物などにはいっさい関心がないため、結局は食べ物につかうのでたいして変わらないと考えていた。
「こちらの
「ええっと、最後に……その、首にはくれぐれも御気をつけください。なんとなく、ですが、厄の相が表れていますので」
「首、ですか。ありがとうございます。承知いたしました」
頭に乗せられた木蓮の
(私だったら、あんだけ重そうなものを乗せてたら、翌朝には首の筋がつってるな)
その後もしばらく占いを続けていたが、ゆうがたになって雨が降りだしてきた。軒のないところでやっているので、濡れたくない客がぞろぞろと帰りだす。妙も
「もう終わりなのか」
声をかけられ、振りかえる。
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