霜降




 面白くないなあ。

 退屈だなあ。


 夢も希望もなく、ただ不満だけを口にしながら生きて行くのだと思っていた。

 けれど、独りではない。

 あいつと一緒に。


 あいつが傍に居てくれるものだと疑わなかった。

 例えば二人で居ても面白いとも楽しいとも感じず、不満だけしか口にしなかったとしても。

 あいつがずっと傍に居るのだと疑わなかったのだ。






 見つけてくれないかい。

 あいつの養い親であり俺たちの師匠とも言える彼からそう願い出されて即了承すると、言われたのだ。


 あの子に似た化け物か、あの子の脱け殻がこの町のあちらこちらに出没するけれど、あいつらの手を取ってはいけない。

 手を取ると。


 連れて行かれる。と。


 あの子の手だけしか取ってはいけないよ。


 と。











 違う。

 違う違う。

 こいつもこいつもこいつも。


 なあ。

 なあおまえ。

 本当は。











(2022.11.27)


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る