OZ 樹なつみ 白泉社
先日硬い本で硬い感想を書いた反動で、本日はゆるゆるです。
氷室冴子さんのことを書こうと思っていましたが、続きすぎてくどい気がしたので一旦別の話題にしてみようと思います。
そして読書の思い出に漫画を含めるかどうか迷いましたが、含んじゃいます。わけるのもややこしいですし、そんなに数書くかどうかわかりませんので💦
もしかしたらアニメも入ってくるかも知れないぐらいの緩い感じでこちらはやっていきたいと思います。
そしてどうしても語りたかったのがこの漫画、樹なつみさんの『OZ』。
名作なんです!
最初に読んだのは中学生なりたてぐらいの頃かな?親戚のお姉さんが漫画好きで、読み終わった漫画をくれることがあったんですが、その中にこの漫画が入っていました。
上に貼ったのは文庫版ですが、ジェッツコミックの大判コミックスで最初は読んで、ボロボロになったので大人になってから愛蔵版を買い直すという……。
樹なつみさんといえばアニメ化された『花咲ける青少年』や『獣王星』などでご存じの方も多いと思います。私も『OZ』でハマって以来ほぼ全作読んでいますが、それでもこの『OZ』が1番好きかも知れません。
少女漫画ではありますが、骨太のストーリーでグイグイ読ませるSFなのです。
自分であらすじ書くとゴリゴリにネタバレしそうなので引用します。
大戦で核ミサイルが爆発して世界と人類が壊滅状態となってから31年後、未だ戦乱と混迷、食糧不足、エネルギー不足、環境破壊による砂漠化など、人類の先行きに希望が持てない世界の裏側でささやかれる1つの伝説があった。それは、大戦前に科学者(頭脳)集団が創った巨大シェルターの存在だった。飢えも戦争もない最先端の科学都市、その名を「OZ」(オズ)という。
生体工学を専門とする天才少女・フィリシアの前に、死んだ母そっくりのサイバノイド・1019(テン・ナインティーン)が現れる。1019はフィリシアの兄リオンの製作物であり、リオンからフィリシアへの伝言を携えていた。「OZで会おう。」そのメッセージを聞いたフィリシアは、その場に居合わせた傭兵・武藤(ムトー)を供とし、OZへと向かう旅に出る。
Wikipediaより引用
この“OZ”はもちろん『オズの魔法使い』から取られています。理想の科学都市“OZ”がエメラルドの都、そこへ至る砂漠の道が黄色いレンガの道に見立てられていて、もちろんフィリシアがドロシーです。上のあらすじには出てきませんが、途中でオーティス・ネイトというムトーの傭兵仲間も加わります。途中別れ別れになったり、サイバノイドとバイオロイドの中間型の1024(テン・トゥエンティーフォー)も加わったりするのですが、このフィリシア以外の登場人物がカカシやブリキの木こりや臆病なライオンに呼応するかといえばそうではなく。
私の個人的な意見ではありますが、この3者は全て19や24といったサイバノイド、バイオロイドが内包しているのかなと思います。
旅はもちろん平穏なものではなく、さまざまな事が起こるのですが、1番の問題は道案内役の19のAIには、フィリシアとリオンの母、パメラをモデルとした思考回路が隠されていること。このパメラというのがとんでもない毒婦で。
高級官僚相手の娼婦だったパメラですが、生粋のサディストなのです。パメラに魅了された男達を殺すよりも残酷に破壊して、その壊れていく様を楽しむという。最後は乳癌を患い死期が近いことを悟った彼女はパーティー中の飛行機を爆破して取り巻きを道連れに自殺します。
その母を慕い、母の資質を最も受け継いでいるのがリオン。自分だけのパメラを作りたくて、パメラ・プログラムを組み込んだサイバノイドを作ったのです。
しかしパメラのような複雑な残虐性をAIで再現することは不可能で、パメラが目覚めた19は素手で人を虐殺し血を見ることを楽しむ恐るべき殺人マシンとなってしまうのです。そのため19は廃棄扱いとされるのですが、19はパメラ・プログラムをリオンに解除してもらうことを目的に、OZへと向かうのです。
この漫画で描かれるのは、人とヒューマノイドを分けるものは何か、AIが人と同じ感情を持つことは可能か、ということです。
SFにおいては使い古されたテーマだと感じる人もいるでしょうが、さにあらず。
身体構造が最も人と遠い19が、パメラの行為に嫌悪し、自分という存在の不確かさを嘆いて涙する姿、人工皮膚、人工血管、人工血液を持ち構造としてはより人に近づいている24がネイトの心情を理解できずにいる姿。そもそも人でありながら、全く他者の心というものを想像できない究極のエゴイストで人らしさを持ち合わせないリオン。
そしてOZ創設メンバであるダントリー博士。1人の天才に熱狂し、人の手に余るほどのいきすぎた科学を産み出してしまったことへの彼の後悔もまた物語に深みを与えています。
人とは何か、人間らしさとは何か、科学とは
何か、そうした事が緻密に描かれていて、考えさせられるところの多い作品なのです。
ですが説教くさいところは1つも無く、極上のエンタメとして出来上がっているという本当にすごい漫画なんです。
男性が読んでも面白いと思えるんじゃないかなあ。
恋愛要素もあるにはありますが、状況が状況なので、少女漫画にありがちな甘々展開はありません。
あと何と言ってもセリフがいいんです。
書くとネタバレになるので書くのは控えますが(ほんとはめっちゃ書きたい)、もうほんとにとにかく読んでみて!と言いたくなるこの作品。
ちなみに私はネイトがお気に入りキャラでした(笑)。
さてこちらも同好の士はいるでしょうか?
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