母のこと。
これまで子供の時に出会った本のことを書いてきましたが、私が本の虫になったのは母の影響がかなり大きいです。
母は子供の頃病弱だったそうで、よく学校を休んでは家で本を読んでいたそうです。昭和20年代生まれですからテレビもなかったし、本を読むぐらいしか時間潰しの方法がなかったというのもあるでしょうね。
そんな本好きの母ですから、私たち姉妹にもよく読み聞かせをしてくれたし、比較的本はあまり制限せずに買ってくれました。
母も児童書は好きなようで、子供がねだるからと言いながら自分が読みたいのもあったんじゃないかと思います。実際児童向けの全集的なものをいくつか買ってくれていましたが、もれなく母も読んでいましたし、私が図書室で借りた本も「それお母さんも読む」と言って読んでいました。気に入ったものは改めて買ってくれたりしたのでありがたかったです。2年生か3年生の時の課題図書、『ルドルフとイッパイアッテナ』なんかはそのパターンで、続編の『ルドルフともだちひとりだち』も買ってくれて嬉しかった思い出。
ここまでだと、普通にいいお母さんですよね。
でも私が学年が上がって段々大人むけのものでも読めるようになってくると変さを発揮しはじめます(笑)。
もちろん最初から完全な大人向けの小説を勧められたわけではありません。
北杜夫さんの『どくとるマンボウ航海記』や『船乗りクプクプの冒険』、井上ひさしの『ブンとフン』辺りから段々と、という感じでした。
一応レベルは考えてくれていたようですが、うちの母は「面白いが正義」の人なので、勧める順番が無茶苦茶かつ名作を読ませようと思って勧めてこないので、いわゆる代表作を大人になるまで読んでいなかったということもしばしば。
小4だったと思いますが、読書感想文書くのになんか書きやすい本ない?と訊いたところ、勧められたのは井上靖『しろばんば』と遠藤周作『悲しみの歌』。
『しろばんば』は自叙伝的作品3部作の1作目ですが、それよりメジャーで薄くて読みやすい『あすなろ物語』はスルー(当時私は読んでない)。『悲しみの歌』は『海と毒薬』の続編にもかかわらず続編から勧めてくるという。小学4年生がそんなこと知るわけもないので、そのまま読みましたが、後々知った私が勧める順番がおかしくないかと言うと、面白いやつから読んだ方がええやろ、と。
あと母のレーティングの基準がよくわからない。
お若い方はご存じないと思いますが、私が小学生のころは今ほどレーティングという意識がなく、バカ殿では普通に女性の胸が丸出しになったり、金ローみたいなゴールデンタイムの映画番組で五社英雄作品が放送されたりしていた、ガバガバな時代です。もちろんうちの母もそういった番組はなるべく子供の目に触れないようにする普通の親でしたが、文字になるとその辺が吹っ飛ぶようで、永井路子、田辺聖子、松本清張、五木寛之etc勧められて読むようになりましたが、アレです。けっこう色っぽいシーン出てきます。そういうわけで保健体育の授業を受ける歳になる前に、なんとなくそういうようなことを知る羽目になる私。
とはいえフォーカスされているのはそういう部分ではないので、フーンぐらいの感覚で小説そのものを楽しんでいたわけではありますが。
そんな時に出会ったのが、2つ上の学年の同じ地区のお姉さんの家にあった里中満智子の『天上の虹―持統天皇物語』と大和和紀の『あさきゆめみし』。子供の少ない田舎でしたので、あまり学年とか気にせずに遊んでもらって、お家に行った時に読ませてもらったのを面白いからと借りて帰ったんです。
母は漫画も好きなので、例によって「お母さんも読むー」となり目を通した母が難しい顔をして私を呼ぶわけです。
少女漫画の2大巨頭が書いたこの漫画。青年誌(『mimi』だったかな?『Young You』かな?)に連載されていたのでベットシーンがあったんですよね。とはいえそこは少女漫画出身のお二方、お胸がチラ見えする程度のソフトなもの。でも小学生が読むには早いですよね。ましてや4年生ごろのことですから親がうろたえるのも仕方ない。
と、思うんですが!いやいや、あなたそういうシーンがある本無造作にすすめてましたやん!!!というツッコミをいれることになります(笑)
青い鳥文庫の時に書きましたが、アラビアンナイトにハマっていた私の買って攻撃が面倒くさくなった母は、同時期に自分の世界文学全集の中からバートン版の『千夜一夜物語』を渡してこっちで読めとか言っていたわけですよ。読んだ方はご存知でしょうが、おもいっきり乱交の場面から始まります。
どういうことよ!!!
基準がわからんわ!!
言われてみれば……という顔になる母。そこで反省するかと思いきや開き直りましたね。私のなんか面白い本ない?というフリにそれこそ何でも勧めるようになりました(笑)
小学生に井上靖の『猟銃』とか読ませてどうするんだという話です。正直大人の話すぎて面白くなかったですしね。
ちなみに小6あたりから名作系に勝手に手を出し始めた私でしたが、三島の『仮面の告白』が面白くなかったと言えば、こっちの方が面白いと『禁色』や『美徳のよろめき』を差し出し、川端康成も『伊豆の踊子』面白くないと言えば『眠れる美女』を勧め、谷崎もまず勧められたのは『刺青』でした……。
かと思えばロマン・ロランの『ジャン・クリストフ』やトーマス・マンの『魔の山』はマストで読めと言う一方で、『レ・ミゼラブル』をやっとの思いで読んだ娘に向かって描写がくどいから子供向けのダイジェストで十分だと言い放つ始末。
数年前に妹が『細雪』を読んだけど……と言うと即座に「あんまり面白くなかったやろ、あれは映画で見るもんや」と。
そんなフリーダムな母に育てられたおかげで読んでない名作も結構あるので、読書家と名乗るのは気が引ける乱読派に育ちました。
ただ漫画もラノベも否定しない人だったのはありがたかったですね。自分の好き嫌いは言いますが、馬鹿にしたり見下したりすることはなかったです。『銀英伝』も『アルスラーン』も読んでたし、コバルトも一緒にハマってました。母も面白いと思った漫画はお小遣いで買わなくても買ってくれましたし。
手放しで褒めてくれることの少なかった母ですが、『ガラスの仮面』文庫版全巻や『日出処の天子』全巻を揃えたときは大いに褒めてくれました(笑)。あ『BANANA FISH』も。
私がもう40を過ぎましたから母ももういい歳ですが、今でも実家に帰るとなんか面白い本ないか?漫画買ってるか?と言います。新聞の書評欄のチェックにも余念がない様子。
読まなきゃいけないとかそういう押し付けなしに、自分が面白いと思う本を好きなように読む、その楽しさを教えてもらったことに感謝してます。
私にとっては読書はゲームしたりドラマ見たりと同じカテゴリの娯楽なので、あんまり人が本を読むか読まないかはどうでもよかったりします。でもゲームとかドラマに比べると、あれいいよねーと盛り上がれる相手が少ないのも事実で、それはちょっと寂しいです。読書好きといいながらそれをステータスにしてて、ベストセラー読んでたりキャラ文読んでたら馬鹿にする人とかもいますしねぇ……。
面白かったらなんでもいいんだよ!
そんなわけで同好の士を探してこうして駄文を書いております(笑)。
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