第5話 児童書との出会い 1

 さて、小学校に入ると素敵な場所がありました。

 図書室です。

 私が育ったのは田舎で、市の図書館はあるにはありましたが車で20分ほどかかり、仕事をしている両親が日常的に連れて行くには不便。本屋さんも然り。今思えば個人経営の小さな町の本屋さんでしたが本屋さんに行くのは私に取ってはイベントでした。

 そんな私にとって学校の図書室は夢のような場所でした。

 田舎の小さな小学校にしては中々の蔵書だったと思います。(今行けばそうでもないかもしれませんが……)

 ここにある本全部読む!ぐらいテンションが上がったのを覚えています。

 一年生の私がまず手に取ったのは講談社の幼年創作童話シリーズです。

 松谷みよこさんのオバケちゃんシリーズ、やなせたかしさんの『ルルン=ナンダーのほし』、『おばあさんと空とぶカレー』、『耳かきのすきなおうさま』etc…

『ルルン=ナンダーのほし』は本当に名作です。空から落ちてきてしまったお星さまの子供と少年の出会いと友情と別れ。こんな短いお話にこんなにも濃い物語を詰め込めるんだ、と今でも思います。言葉遊びも楽しくて、2人が出会った時のやり取りを大人になった今でも覚えています。

「ぼく、ルルン=ナンダー」

「ルルン=ナンダーってなんだぁ?」

「ぼく、ルルン=ナンダーなんだ!」

「ルルン=ナンダーなんだぁってなんだぁ?」

 こういうの、子供は大好きですよね!友達と掛け合いで遊んだりして何度も読みました。

 このシリーズはもう絶版になってしまい、中のいくつかは復刊しているようですが、絵が違ったり何より本の手触りが違うので寂しい限りです。いくつかは買ってもらったものもあり、まだ実家にあるので大切にしたいです。

 このシリーズも大好きだったのですが、もっと大好きだったのが同じく講談社の世界のメルヘンシリーズです。

 大判の本に小さめの字が大人っぽくて、何よりどの巻を取っても絵が美麗なのです!

 池田浩彰氏の『サンドリヨン』やアンデルセン作品の挿絵は溜息ものです。

 これ、大人になってからAmazonで状態の良いものを探して揃えました。そのぐらい好きで好きで、高学年になる頃除籍図書になることが決まった時は譲ってくれと駄々をこねて先生を困らせたことも……。

 世界の民話集や童話集を読むのが今でも好きなのですが、原点はこの本との出会いですね。特に北欧版が好きで、『長靴下のピッピ』で有名なリンドグレーンの『小人のニール・カールセン』は絵もお話も可愛くて!

 ケース入りで無地のパステルカラーの厚い表紙に金の箔押しという装丁も素敵なんです。

 もし図書館などで見かけたらぜひ手に取ってみてください!


 この辺りの本はまだ絵本の延長という感じですが、少し漢字が入ってきたりとやはり幼稚園にあった絵本とは違う感じですこしお姉さんになった気分でした。

 次のお話ではいわゆる児童文学、と呼ばれる本を取り上げていきたいと思います。

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