第137話 おじさん一学期終了する間際で爆弾を落とされる
地竜の死体を回収したのはいい。
通常ならば素材どころではないほど、傷だらけになるのだ。
それがほぼ無傷の状態で手に入ったのである。
色々と活用できることはあるだろう。
だがそれをどこに保管するのか。
その問題を解決するには話し合いが必要になる。
さすがに三公爵家の長老的な存在である学園長でも鶴の一声とはいかない問題だ。
結局のところ、おじさんはいつものように丸投げした。
そういう政治的な話は苦手なのである。
なにせ中の人は小市民なのだから。
父親には悪いと思うが、おじさんも面倒なのだ。
ということで学園長も王宮にて、いつものメンバーで話すことにした。
その後、しばらくは地竜が出現した原因を探った二人である。
ただめぼしい痕跡は見つからなかった。
時間的な制約が大きかったのだ。
王都まで日帰りできる距離とは言え、滞在できる時間は決まっている。
結果として、こちらも後日王宮から騎士団が派遣されることになった。
こうしておじさんの魔物討伐も幕を下ろす。
おじさん的には地竜という大物を倒したものの、不完全燃焼であった。
もっとこうあるだろうと思うのだ。
ただその不満は次回に持ち越しである。
学期末に行なわれた学科と実技試験の両方が終了した。
数日の休みを経て、今期は終了となる。
一学期の終わりだ。
この試験の結果によって、クラスの変動がある。
だがおじさんは
その予想どおり、担任である男性講師からクラスに変動がないことが告げられた。
皆、思っていたよりも試験の結果がよかったようだ。
特に
全員が例年の試験よりも高得点を記録したのである。
その成果に喜びつつ、来期からもまたがんばろうと決意を新たにする
つつがなく学期末の一日が終わろうとしていた。
おじさんは
学期末を経て、長期の休暇に入る。
そして来期になれば、目標としていた対校戦が始まるからだ。
「それじゃー休暇中もしっかりするんだぞー」
男性講師が閉めの言葉をかけていたときである。
「納得がいかん!」
声をあげたのは王太子だ。
またか、と
そして殺気立つのである。
“リー様は私たちが守る”と。
「納得がいかんのだ、リー!」
「なにごとですの?」
指名されたおじさんが返答する。
「なぜお前ばかり評価されるのだ! オレが王太子なのだぞ」
決して王太子の成績は悪くない。
むしろ学園の一年生としては上デキである。
十年に一人でるか、でないかといったレベルなのだ。
優秀さで言えば、十分だろう。
ただそんな人物であろうと、だ。
おじさんという存在の前にはかすんでしまう。
なにせ中の人がちがえば、ナチュラルボーン破壊の意思になるような存在だ。
“退屈な世界など壊してやる”的な、迷惑この上ない人になってもおかしくないのである。
おじさんだから、この程度ですんでいるのだ。
優劣を比べることすら
だが十四歳という自己が肥大しまくる年齢には認められないことなのだ。
自分の才覚に自信があるからこそ、おじさんの存在を疎ましく思うのである。
そして社会的な立場が王太子であることもまた、彼を追い込んでいるのだ。
王太子は優秀でなければならないという思いこみ。
それはある意味で呪いであった。
「オレがオレであるために、リーよ、貴様を倒してオレこそが最優だと認めさせねばならん!」
満座の中で、立ち上がりおじさんを指さす王太子である。
「決闘だっ! リー=アーリーチャー・カラセベド=クェワ!」
その表情はどこか自慢げでもある。
おじさんはうんざりしながらも、王太子の言葉をきっちり無視した。
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