第129話 おじさん後始末をする
公爵家タウンハウスの庭にて父親が宣言した。
「このまま放置はできないよね。制御もできないんじゃ壊すしかないよね?」
“えー!”とお子様組から声があがった。
大きいのはロマンだ。
動物だってゴーレムだって大きいのは正義なのである。
しかしそれは安全という保証があってこそだ。
今のままでは危険すぎる。
その点、父親の言うことはしごくまっとうなのである。
だが壊すのはもったいないようにも、おじさんは思うのだ。
とは言え、このままではおじさんの宝珠次元庫に入るかもわからない。
お手製のものは倉庫のひとつやふたつ分くらいは入る。
しかしこの巨大ゴーレムは無理だろう。
宝珠次元庫……と考える。
はた、とおじさんに思い当たることがあった。
それは初回のダンジョン講習で手に入れた成人男性の握りこぶしほどの宝珠だ。
トリスメギストスが空気を読まずに退治してしまった魔物のドロップ品。
メーガンという女性講師もアレはおじさんのものだと所有権を放棄していたのである。
それを思いだしたのだ。
あの大きさの宝珠を次元庫に変えてしまえば、十分な収納力があるだろう。
ならば壊さなくてもすむ。
いや、待てよとおじさんは
この大きさの宝珠なら、巨大ゴーレムの動力源としても利用できるのではないだろうか。
だが自律行動するアホなゴーレムなど災厄でしかなかろうかとも思う。
ということで、ここはおとなしく宝珠次元庫にしまうことにする。
いつものように宝珠を取りだして、さっさと錬成しようとして待ったがかかった。
「リーちゃん! その宝珠売ってくれないかしら?」
母親である。
「お母様、アレの動力源にしようと考えているのでは?」
“そのとおりよ!”と予想どおりの返答である。
「でもあのゴーレムを自律行動させるのは危険では?」
“ぐぬぬ”となる母親であった。
「ここは次元庫に錬成して、あれを保管しておきますわ。あと思ったのですが、もっと小さいもので色々と試してみるのがいいのではないでしょうか?」
「詰まんないでしょ」
“ふふふ”とおじさんは不適な笑みをうかべた。
「お母様、魔法水銀を使って不定形の魔法生物を作るのはどうでしょう? いろんなものに変身できたら面白いのではないですか?」
おじさんが提案したのは、アニメにでてくる黒いやつだ。
自由に形を変えることで様々な状況に対応できる。
なんてことを話すと、母親が食いついてきた。
「なにそれ、面白そうじゃない! そうかぁ魔法水銀を使うって発想はなかったわね」
「ヴェロニカ、リー。そういう話はあとで」
父親からの指導が入ったので、おじさんはさっさと錬成魔法を使う。
そしてできあがった宝珠次元庫に、巨大ゴーレムを収納してしまった。
巨大ゴーレムがその場から消えると、改めて公爵家邸を破壊した大きさがわかる。
よく使用人たちに怪我人がでなかったものだ。
本当に運がよかっただけ。
これはちょっと地下の実験室についても考えないといけないかもしれない。
危ない実験はやめようとならないところが、おじさんクオリティである。
ただこの辺りは母親とも相談しながら、進めていく必要があるだろう。
ともかくまずは穴の空いた部分を、おじさんは錬成魔法を使って修復していく。
そして一時間もかからずに、公爵家邸は復旧したのである。
時間的にも昼食の頃だ。
さすがに今から用意をするのは大変なので、おじさんが宝珠から食材を解放する。
今日はバーベキューである。
ささっと魔法を使って焼き台を作っていくと、使用人たちもキビキビと動きだす。
庭に座れるようにシートを敷き、飲み物も用意してもらう。
串に刺さった肉や野菜を焼き、食べる。
いつもの食事とはちがう、ワイルドな食べ方に子ども組は大喜びであった。
大人組は昼から酒をあおっている。
主に父親が。
こういう催しも楽しいものだ。
おじさんはニコニコとしながら、その光景を見つめ思う。
賑やかで慌ただしい日常。
それこそが愛おしいのだ、と。
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