第108話 おじさん母親へのプレゼントをお披露目する
露天風呂を充分に堪能したおじさんたちは更衣室にいた。
使用人たちが甲斐甲斐しく主たちの身の回りを世話をする。
されるがままになりながら、おじさんは声をかけた。
「お母様に贈り物がありますの」
「まぁ贈り物? なにかしら?」
“こちらですわ”とおじさんは持ちこんでいた宝珠次元庫からガラス瓶を取りだす。
きちんと遮光できるように深い紫色になっているところが細かい。
しかも上蓋が金色と、見た目にも豪華なものだ。
「薬草を練りこんだクリームですわ。お肌がきれいになりますの。あと香りを少しつけてあります。お母様が好きなルゼリアの花から抽出したものですわ」
と説明しながらおじさんは蓋をあけて、指先にちょんとクリームをつける。
それを肌にのせると艶が増す。
「ありがとう、リーちゃん!」
見た目は美魔女である母親だが、やはり良いお年頃なのだ。
色々な悩みというものはあって当然である。
そこへおじさんが解決策を持ちこんだのだ。
さっそく使用人にいってつけてもらっている。
その様子をガン見しているのが、おじさんや妹についている使用人たちだ。
彼女たちだって女性なのだ。
視線だけで理解できるほど、おじさんの作ったクリームが気になっていた。
「お母様と同じものではありませんが、あなたたちの分もアドロスに渡してあ……」
「ありがとうございます、リーお嬢様!」
おじさんが最後まで言葉を告げることはなかった。
「ねえさま。そにあもきれいになる?」
妹だって小さくても女性だ。
やはり気になるのだろう。
ただいくら肌に安全なものしか使っていないとはいっても妹にはまだ早い。
「ソニアにはまだ少し早いかしら。大きくなったらプレゼントしますわね」
おじさんの言葉に不承不承といった顔で頷く妹であった。
「それとお母様、こちらはルゼリアの花から作った香油ですの」
ルゼリアの香油はふわりと甘い香りがする。
「ソニア、こちらへいらっしゃい」
とおじさんは妹を膝の上にのせた。
そのまま風を操って、妹の髪の毛を乾かしていく。
この世界における魔法とは、原則ぶっ放すものが多い。
風の魔法とてそうだ。
つまり威力をコントロールしつつ、継続的に風を吹かせるというのは高等技術なのである。
カラセベド公爵家の使用人たちはレベルが高い。
風を使って乾かすこともできるのだが、どうしたっておじさんほどの技術はない。
たまに出力をまちがって、ドライヤー以上の風になることがある。
それでもできるだけ上等なのだ。
なのでおじさんは特に気にしていないのだが、今回は妹の髪で試してあげたかった。
まだ濡れている妹の髪に香油をなじませていく。
そして魔法を使って乾かすと、妹の髪がツヤツヤになった。
「はう!」
ふわりと甘いルゼリアの花の香りが更衣室を包む。
その香りに妹が反応したのだ。
「さぁできたわよ」
妹は自分の髪を触ってご満悦であった。
「ソニア、きれいになったわね」
母親の言葉に妹は満面の笑みで応える。
「リーちゃん、お願いね」
ちゃっかりおじさんの前に陣取っている母親であった。
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