第76話 おじさん学生会に挨拶をする
無事に
おじさんは意気揚々として、座学が終わったあと課外活動にむけて支度をする。
そこへ男性講師が顔を覗かせて、声をかけた。
「これから学生会の面々と顔を合わせに行くぞー。打診のあった者はついてこいー」
学生会への参加は来期からである。
その前に顔つなぎくらいはしておこうという話だ。
おじさんに聖女とアルベルタ嬢、それに王太子と取り巻きたち。
今年は例年以上に参加者が多いとのことである。
ぞろぞろと男性講師のあとをついて、おじさんたちは学生会の部屋へむかう。
と言っても、実は場所は離れていないのだ。
おじさんたちが講義をうけている教室があるのが本棟になる。
その本棟の四階に学生会室はあった。
おじさんたちの教室が二つほど入りそうな広さはある。
しかし壁際にびっしりと置かれた資料や本棚のせいで、むしろ狭いといった印象さえあった。
そんな部屋の中央にテーブル席とソファーが置かれている。
どちらかと言えば質素なものだ。
窓際には木製のテーブルがあり、そこに学生会の会長が座っていた。
「じゃあ、あとは頼んだぞー」
それだけ言い残して、男性講師はさっさと部屋を出ていく。
学生会の会長は女性であった。
淡い若葉のようなライトグリーンの髪に、深い翠色の瞳が印象的である。
一見して怜悧なように見えるのはメガネをかけているからだろうか。
最上級生という年齢のせいか、どことなく艶っぽさもあった。
赤色の頬が彼女を見てから、少し朱に染まっている。
「学生会会長のキルスティ=アンメンドラ・サムディオ=クルウスですわ」
立て板に水といった流暢な挨拶であった。
その家名は学園長と同じものである。
三公爵家であるサムディオ家の御令嬢だ。
学園長からすればひ孫にあたる。
「キース=エーリオ・ヘリアンツス・リーセである」
王太子が尊大な態度をとる。
その姿を見て、会長は背伸びをする子どもかと思った。
そして、“これは思っていたよりも大変かも”と確信に似た予感を持ったのである。
続いて王太子の取り巻きたちが挨拶をしていく。
それらを内心では苦笑いしつつ会長は流した。
本来であれば、親の地位が高い順に挨拶をしていくのだ。
そうした手順をすっ飛ばした王太子たちの取り巻きに対しての印象は最悪である。
「お初にお目にかかります。リー=アーリーチャー・カラセベド=クェワですわ」
おじさんが華麗にカーテシーを決める。
その後にアルベルタ嬢、聖女と続いた。
「皆さんを学生会に歓迎いたします」
全員の挨拶が終わったところで、会長が言葉を続けていく。
「本格的に学生会へ参加していただくことになるのは来期からですが、その前にある程度は馴染んでほしいのです。ですから時間の都合がつくときには、気兼ねなく学生会室へと足を運んでくださいな」
“それと”と会長が左右に立つ二人の男子生徒に目をやった。
「ヴィル=ギハ・ギューロ。学生会では副会長を務めている。気軽にヴィル先輩とでも呼んでほしい」
会長の左側に立っていた男子生徒である。
長身痩躯で赤灰色の髪をツーブロックにしたイケメンであった。
「シャルワール=リャシ・ホーバル。オレも副会長だな。シャル先輩でいいぞ。ちなみにヴィルは侯爵家の嗣子で、オレは伯爵家の次男になる」
右側に立っていた生徒が口を開いた。
いくらか乱暴な言葉遣いだが、筋骨隆々とした体躯と黒色の短髪という外見にあっていて違和感がない。
「他の学生会所属の生徒は後日に紹介いたしますわ」
会長の言葉でお互いの挨拶が終わったのである。
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