第63話 おじさん課外活動のことを聞く
休日明けの学園である。
その日の講義はつつがなく終わった。
おじさんも“さて帰ろうか”なんて思っていたところである。
「そろそろ課外活動が始まるからなー。ちゃんと考えとけよー」
担任の男性講師がそんな言葉を残して教室を退出していく。
課外活動。
平たく言えば部活動のことである。
この学園では生徒は何らかの課外活動に所属しないといけない。
おじさんとしても課外活動をするのはやぶさかではないのだ。
前世のおじさんは部活動なんて
学校が終われば、すぐにアルバイトをして生計を立てていたからだ。
今生では部活動を楽しめる。
ただ、おじさんは学園のことはあまり知らないのだ。
なので帰ったらOGである母親に相談してみようと考えていた。
「あの、リー様」
アルベルタ嬢がおじさんを見て、目を輝かせている。
「どうかなさいまして?」
「リー様はどの課外活動に所属されるのですか? できればご一緒したいのですけど」
おじさんとしても、アルベルタ嬢が一緒なら心強い。
ただアルベルタ嬢がどんなことに興味を持っているのか。
それにもよるだろうと思う。
「アルベルタ嬢はなにか課外活動の当てはあるのですか?」
そう。
なんと言っても貴族のかよう学園である。
それこそ浮世のしがらみというやつがついて回ることだってあるのだ。
軽々におじさんと一緒の課外活動をしたいと言っても大丈夫なのだろうかと心配したわけだ。
「当てはありませんわ。実家からも好きにしていいと言われていますし……」
「し……?」
おじさんは首を傾げて、先をうながした。
「なので私はリー様が所属される課外活動に参加したいのです」
アルベルタ嬢としては一緒に部活がしたいのだ、とおじさんは判断した。
それが理解できれば、断るようなことではない。
「そうですか。では同じ課外活動に参加しましょう。わたくしもアルベルタ嬢がいてくれると心強いですわ」
にっこりと笑顔で答えるおじさんであった。
その笑顔を見て、アルベルタ嬢は感激して顔を紅潮させたのであった。
他の女子組もおじさんの言葉をうけて、“きゃあ”と声をあげている。
恐らくは彼女たちも同じ課外活動に参加したいのだろう。
それは前世でぼっちであったおじさんにとっては嬉しいことであった。
そんな一幕がありながら、おじさんは帰宅した。
『御主人様、おかえりなさいなのだ!』
『わふん!』
使い魔たちが出迎えてくれる。
その頭をなでて、おじさんは母親の居場所を侍女に聞いた。
「お母様、ただいま帰りましたわ」
「おかえりなさい、リーちゃん」
他愛のない会話だが、おじさんはとても気に入っているのだ。
「お母様、少しご相談があるのですが」
“んー”と指を顎にあてて、考える母親の仕草はおじさんとそっくりである。
「なにかしら? ではお茶でもしながらお話しましょう」
母親がそう言うと、侍女たちがスッと頭を下げてお茶の準備に動きだした。
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