第41話 おじさん万象ノ文殿で召喚魔法もどきをつくる
使い魔とはさまざま権能を持つ存在である。
権能というよりは特殊能力といった方が正確だろう。
例えば王太子が契約した騎士精霊の場合、強化の魔法が使えるようになる。
身体強化とちがって自身の肉体だけではなく、身に纏っている武具も含めて強化できるのだ。
地味だが使い勝手のいい能力だと言える。
ただし魔力の消費が大きいのが難点で、使いこなすには努力が必要だろう。
王太子の魔力は多いが、無尽蔵ではないからだ。
では、おじさんが契約した
その名称どおり、あらゆる情報を知ることができる権能を持っている。
とは言えだ。
全知というわけにはいかない。
そもそも女神ですら全知ではないのである。
つまり王妃毒殺未遂事件の真相を知ることはできない。
だが失伝している召喚魔法については、
おじさんは女神に与えられた天与を、持て余すことなく磨いてきた。
そのため何となくといったレベルで魔法については初見でも理解できるのだ。
「とりあえずー、講義室に戻ってろー」
男性講師の声が響いた。
その前におじさんはすることがあるのだ。
「先生、少しお待ちになってくださいますか?」
「あーさっき言ってた件か」
それは使い魔契約ができなかった者たちへの救済措置である。
「あーうん。そうだなー。お前ら、これからここで起こることは口外禁止だからなー。話そうとしたら口が開かなくなるからなー。わかったら返事しろー」
男子組、女子組から声があがる。
それを確認して男性講師はにやりと笑った。
【契約・締結】
おじさんも使った契約魔法である。
男性講師は元冒険者という異色の経歴持ちだ。
こうした契約魔法を使う機会も多かったのである。
その鮮やかな手並みにおじさんは、思わず拍手をしていた。
「じゃあーリー=アーリーチャー・カラセベド=クェワー。あとは任せたー」
こくりと頷いておじさんは
「該当するページを開いてくださいな」
『了解した、我が主よ』
ペラペラとページがめくれていき、召喚魔法について書かれたところが開かれる。
「なるほど、そういうことですの。理解しましたわ」
“では”とおじさんは腰につけているポーチから宝珠をひとつ取りだす。
【錬成】
宝珠に錬成魔法を使って、召喚魔法の魔法陣を焼きつけていく。
これで魔力をとおせば簡易的な刻印召喚陣の代わりになる。
ただし飽くまでも簡易的なものでしかない。
本腰を入れて作れば、より高性能なものもできる。
しかしそんなものを作って、学生に配ってしまうのは危険だ。
なので擬似的に使い魔として使えるものを作る。
もちろん他者に奪われて悪用されないように所有者登録もつけた。
「完成ですわ」
おじさんお手製の魔道具である。
女子組で使い魔契約ができなかった生徒に所有者登録をしてもらう。
その後に使ってもらうと、みごとに召喚魔法が発動した。
「リー様……ありがとうございます」
女子生徒は涙を流しながら頭を下げる。
「お気になさらず。使いこなすには努力と時間が必要でしょう。精進なさってくださいね」
そうしておじさんは契約にいたらなかった生徒たちに希望を与えたのであった。
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