第14話 戦いのサーカス(3)
「カガリンの言う、『覚悟』を見せてもらうよ。 姉妹で殺し合うのもイヤだからさ〜、
燈は手にしたカランビットナイフと手裏剣を地面に捨て、ポケットや服の裏にも何も無い事を篝に見せる。
「わ、わかりました。 お姉ちゃんには負けません!」 篝はすでに素手だ。
(カガリンはこの世の厳しさを分かってないんだ。
お互いに
二人とも打撃を起点に
燈が間合いを制して篝の手首を掴みにくる。
燈がタイミングを測って組みついてくる。篝はショートパンチを放つが腕で防がれてしまう。
(可愛いカガリン、私を信用しているんだね。 でもね、この世は残酷なんだよ?)
「カガリンごめんね。 でも、これもカガリンの為だから」
燈が
軍隊格闘ではナイフを使った組み技もあり、素手で対抗できるものではない。
燈は篝の肩関節にナイフを突き刺そうとする。
「うん、お姉ちゃん。 いつもありがとう」
ザクッ!! ナイフが肉を切り裂く音が聞こえる。
篝が隠し持っていた
「な……!? カガリン!?」
「ごめん、ごめんね。お姉ちゃん!」
篝は常備している
「い、いやー……。 負けたよ、カガリちゃん。 まさか、ここまでの覚悟とは」
止血帯での止血方法は、30分に一回は帯を
「お姉ちゃんの止血は私がするから」 篝は泣きべそになっている。
「こらこら、それじゃあ意味ないだろう? たけるんの元へ行ってあげなよ。 ほら、これあげるから。 止血だったら、一人でもできるよ」
燈は
「で、でも……」
「カガリン。 私は霧島家の代表なんだよ? この程度で死にやしないよ〜」
「お姉ちゃん……。 うん。 行ってくるね!」 篝は走り去る。
「はあ〜。 いつの間にやら、大人になったんだなぁ。 ちょっと寂しいぞ」
燈は篝を見送った。
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「タツ
肩が脱臼したアリスはアビーを見守るのが精一杯で次の手を決めあぐねていた。
「降参するなら、君は見逃してあげます。 どうしますか?」
「ふざけるな! 二人の仇だ、勾玉を返せ!」 太助は航平に殴りかかる。
「……残念です」 航平はカウンターのフックを、太助の顎へ打ち込む。
ガゴッ! フックは綺麗に決まり、太助は倒れ込む。
「あなたもどうですか? まだ戦えますよね?」 航平がアリスに近づく。
アリスには次の手が思いつかなかった。降参したら許してくれるのだろうか?
「待たせたな、航平さん! 俺とも遊んでくれよ!」
篝と合流した
「ああ、はい! あなたの事も知っていますよ、武命君!」 航平は嬉しそうだ。
「
「あんたに遠慮は必要なさそうだな? 悪いが木刀を使わせてもらう」
「もちろんです。 それなら私は
航平がヌンチャクを懐から出す。本来は隠し武器なのだが、変なところで正々堂々している。
武命は
しかし、先に航平のヌンチャクが武命の手首へ飛んでくる。慌てて防ぐ。
ヌンチャクを半身で送り出すように振ると、リーチを稼ぐことができる。斬る様に使う時より威力は落ちるが、手や指を狙うなら十分であった。
武命は上段の構えをとって対応する。手が上に上がる為、手を狙われなくなるし、武命のリーチは長くなる。
爆発的な踏み込みで遠距離から飛び込み、航平の額に斬りかかる!
航平はヌンチャクの鎖で木刀を受ける。超人的な洞察力だ。
しかし、ヌンチャクにそこまでの防御力はない。 航平の肩に木刀が当たる。
「
武命は木刀を捨て、即座に
航平もヌンチャクを捨て、縦拳を払って腕を抑える。ズシリと重さが武命へ伝わる。
「
抑えられた腕を捻ってくる。 関節技を警戒して脇を締め、後ろへ下がる。
下がるところへ航平の突きが打ち込まれる! 流水の如く、起こりが無くて重い。
武命は
ボゴッ! 顔面で受けて、鼻血が噴き出る。唇を歯で切ってしまう。
航平はさらに間合いを詰め、フックを放つ。 武命は腕を上げ、ガードする。
ガードしたフックが
「うげっ! 痛え!!」 武命はガードした手で航平の手をなんとか振り払う。
振り払った手を見ると、人差し指の第二関節が折れ曲がり、脱臼している。振り払う際に折られたのだ。
武命に恐怖がまとわりつく。 航平に近づくと、必ず急所に攻撃される。 筋肉の
武命は指を
(
武命は航平を観察する。 航平は殺気を絶やさずに、武命を待っている。
「あ……」 武命は航平の立ち姿と、今立っている場所から昔のことを思い出す。
「ガキの頃、ここで父ちゃんと稽古したな。父ちゃんも、絶対的に強かったな」
武命は(こんな時に何を呑気なことを)と、自分でも可笑しく思う。
「よし! 父ちゃん、覚悟を決めたぜ! いっぺん、死んでみるよ!」
武命は航平に近づいていく。航平は武命の目に
「面白い! 武命君、死んでください!」 航平も武命の覇気に答える。
ジリジリと間合いを詰めていく。ジャブもフェイントも無い。
武命が先に動く。航平の腹へ
航平は武命の喉へ
「アグァッ!」武命は激痛に耐えながら後ろへ倒れ込む。航平は喉の骨を折るべく、倒れこむ武命を追って腕を伸ばす。
武命は伸び切った航平の手首を両腕で掴み、体ごと捻っていく。捻り続けると航平の腕は武命の脇に挟まる。捨て身の
航平ほどの武道家に、単純な捨て身技は通用しない。武命は地面に膝をつき、体幹の力を脇固めに伝える。
ブチブチッ! 航平の肘の靱帯が切れる音が聞こえる。しかし、航平は脚を送り出して武命の膝を蹴ろうとする。
武命は航平の蹴りを
航平は手刀で脳が揺らされていながらも、起き上がる動作をそのまま肘打にする。武命の胸に当たり、肋骨が折れる。
後ずさった武命に航平が大きく踏み込み、掌底を打ち込む。
武命はその航平の腕を
航平の腕が落ちる。 武命は重心を落としながら大きく踏み込んで、航平の
「うぐっ! 見事です、武命君!」
「タフだな、あんた」
「僕の
「あんたの殺気だよ。 強すぎる殺気で、必殺の急所を狙ってくると思ったのさ」
「人体急所を
航平は武命に
「それは差し上げます。 今回は僕の負けです。また
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