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 交戦通達に伴い、やはり敵船団が、いよいよ大気圏突入を開始。


 そんな状況の下、徐々に日が西に傾きつつある空に、我がビッグウメコロボの勇姿があります。


 高度約1万メートル。遥か下は海岸線。守大臣が語ったように、地球防衛軍本部僕んちの誘導により、ここへとやってきたのです。


「ビッグウメコロボの防御力は十分。さらに攻撃のバリエーションも豊富です。よって、まずは様子見。先に相手に攻撃させてから…」


 と、その守大臣の言葉を遮るように、


『いや〜っはっはっはっ…地球の諸君ッ。我々と戦うことを選ぶとは、なんと愚かなッ。いや〜っはっはっは〜っ…』

 

 僕らの斜め上方、なぜか木の板の上に乗せられた通信用モニター昔ながらのラーメン屋さん等のテレビの位置参照に、あの大将軍ガガーンの姿が映し出されました。


『…しかも、そんなロボット1体で、どうやって我々に立ち向かおうというのかな? まあ、よか。もうすぐそこへ行ったるけん、首を洗って待っておくがよい。いや〜っはっはっは〜っ…いや〜っはっはっは…は、はっ…ははぁぁっ…はぁぁぁぁぁぁーっ…!!』


 あれ、なんだか急に様子が変です。また顎でも外れたのかと思いきや、そうではありません。ガガーンさんったら、なぜか打って変わって、悲壮感も露わに叫び始めたのです。


「はて、何事でしょうか?」


 はたと顔を見合わせる、僕ら3人。でも、その答えを知る者は、ここにはいないようです。


『…と、止まらんっ。ふ、船がっ…船が止まらない〜っ…!!』


 ああ、なるほど。そういうことらしいです。ブレーキの故障か何か、その理由は分かりませんけどね。


 しかも、それは決してガガーンさん乗船の物だけに限らぬようで…


 結局、百を超えるという超銀河伝説連邦の大船団は、ことごとく我がビッグウメコロボの脇を、まるで隕石の如き猛スピードで通過。続々と海へ落下していきました。


 これには、我々一同も困惑するばかり。果たして、彼らに何が起こったというのでしょうか。


 かくして、すべての宇宙船が落下するや、ふと我に返ったように言い出したのは守大臣です。


「い、いや、ウメコさん、テンさん…や、やりましたな。このビッグウメコロボの活躍が我々に勝利をもたらしたようです」


 なにやら引きつった笑顔。ごく一方的に守大臣が、僕とウメコさんの手を取ってきました。


「あ、あの守大臣。活躍といっても、僕たちは何もしていない気が…」


「いや〜、よかったよかった。私たち3人によって、地球の平和が守られたのです」


 僕の話を聞いていないのか、それとも聞こえないふりをしているのか、とにかく守大臣が仰るように、地球の平和が守られたことだけは確かなようです。僕たち3人の『傍観』の下に。


「では、勝利のポーズっ」


 ウーッ…


 メーッ…


 コーッ…!


 事前の打ち合わせなど、もちろんナシ。あまりにも急な守大臣の音頭によって、なぜか僕たちまでが人文字で『ウメコ』と書き…もとい、書かされました。


 やれやれ、恥ずかしーです。

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