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「あ、あれは、ロボットです…ね?」
やや向こうに聳える巨体を見上げつつ、僕は横の守大臣に問いかけました。
「仰る通りです。ちなみに、身長57メートル。体重550トンです」
そこで、もう少し近くへ寄って見るに、この巨大ロボ…誰かに似てやしませんか。というか、そっくりです。
「なんだかワタシに似ていまス」
そうなんです。髪型から顔からプロポーションやファッションに至るまで、ウメコさんにそっくりなんですよ。これが。
「これぞ、我が地球防衛軍開発の最終秘密兵器『ビッグウメコロボ』です。こんなこともあろうかと、あらかじめ開発製造されてあったものです」
んな、防衛軍の方々にせよ守大臣にせよ、さっきウメコさんと初めて会ったばかりなのに、どうやってこれを、あらかじめ造っておいたというんでしょーか。
おまけに、この空き地の地下にとは…ますます理解に苦しみます。
まあ、この際それは(百歩以上譲って)不問としまして、選びに選び抜かれた地球防衛軍の精鋭たちが、そのビッグウメコロボのコックピットに乗り込み…んいや、なんで僕たちなんですかっ!?
そう、その『精鋭たち』とは、なぜか守大臣とウメコさんと僕のこと。ふと気がつけば、すでに僕たち3人は、ビッグウメコロボの頭部はコックピット内にいるという…うぬぬ。
で、このメカニカルにして、正面の大きなモニター越しに外の様子が窺える空間の中、僕とウメコさんが守大臣から渡されたのは、当ロボの操縦マニュアルです。
「操縦その他、取り扱いは非常にシンプル。すぐに把握して頂けると思います」
複数のスイッチや計器類を前に、僕とウメコさんが横並びで座る一方、その真ん中やや後方のシートから、守大臣が言ってきます。
どれどれ…なんだか、エアコンとかの取扱説明書みたいに見えるのはともかく、僕もウメコさんも、この十数ページのカタログサイズに目を通し始めました。
ふむふむ、確かにシンプルなようです。この僕の前に並ぶスイッチ類は攻撃用。かたや、ウメコさんの方は操縦用。いずれにしても、『撃つ』『放つ』『歩く』『曲がる』『戻る』などの操作が、それぞれスイッチ1つで行えるようになっているんです。
さらに、その中に紛れて『のむ』『うつ』『かう』なんて、謎のスイッチが存在するのが、僕としては気になるところですけどね。
はてさて、およそ15分ほどで、マニュアルを読了。僕もウメコさんも、それを後ろの守大臣に返しました。
「すでに、敵船団には交戦の旨、我が地球防衛軍本部より通達されているはずです。と同時に、それまでカーマン・ライン付近にあった同船団も、いまや大気圏突入に向け動き出しているでしょう。よって我々は、防衛軍本部の誘導に従い、これからその降下予測位置へと向かいます」
との守大臣の説明に、僕もウメコさんも頷きをもって答えました。
「では、出撃しまス」
操縦担当のウメコさんが、確認を取るよう僕たちを見てきます。
「了解」
僕と守大臣の返答が重なりました。
そして、まもなくウメコさんのスイッチ操作によって、エンジン始動。その足裏の部分から沸き起こったジェット噴射によって、身長57メートル、体重550トンの巨体が、唸りを上げて大空へと飛び立ちました。
真に急展開ながら、地球の明日を懸けた戦いが、いま始まろうとしています。
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