キミ色に染まって

 小一時間ほど前、僕とウメコさんは警察署から、かの宇宙船を引き取ってきました。

 

 それは、やはり盗まれたとの事で、すでに容疑者は逮捕。でも、せっかく戻ってきたのに、その窃盗犯が乗り回したせいで燃料切れ。おまけに帝国との交信も、なぜか雑音がひどくて叶わず。


「これでまた祖国が遠のきましタ…」


 2人して部屋の窓際。僕ともども、そこに座って外を見つめつつウメコさんが、ため息混じりに言いました。


「ですね…」


 いま僕とウメコさんの視線の先には、あのアルミの灰皿をひっくり返したような形の、大きな銀色の物体が佇んでいます。


 それぞ、ウメコさんの宇宙船に他ならず。ええ、ベタなUFOって感じです。

 

 あらたに帝国のサポーターになった某地主さんのご厚意により、同御仁所有という当アパート隣の更地に、それをトラックで運んでもらったのです。


「我が皇帝…我が祖国ヨ…」


 ウメコさんは、なかなか窓から離れられず。もちろん気持ちは分かります。


 あ、でも待ってください。なんか急に閃いちゃいました。


「ちなみにウメコさん。この宇宙船は、いったい何で動くんですか」

 

「どうしてですカ?」


 はたとウメコさんが、僕の方を見てきます。

 

「もしそれが分かれば、この地球でも代替品が見つかるかも知れませんし、あるいは燃料を作ることも出来るんじゃないかな、と」


 でしょ?


「な、なるほドッ」


 ウメコさんの目に輝きが戻ったように見えます。


「では、すぐに宇宙船に行って調べてみまスッ」


 いても立ってもいられぬ様子。すくと立ち上がったがウメコさんは、勇んで部屋を飛び出していきました。

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