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 一体どこへ行ったのかと思ったら、あの空き地の近くに差し掛かったところで、


「…では、帝国のサポーターにならなかった地球の人たちは、その後どうなったでしょウ」


 語尾に特徴アリ。ウメコさんのものに違いなき声が、この僕の耳に響いてきました。


 見れば、またも彼女は人の輪の中にいます。


 またお菓子でも配っているのかと思えば、この度のウメコさんは、子どもたちを中心とした近隣住民の皆さんの前で、紙芝居なんぞを披露しているじゃありませんか。


「いまどき紙芝居とは、これまたレトロな…」


 なんて、僕も世代じゃありませんけどね。


 どうやらウメコさんは、その紙芝居を通して、あらたにダンガル帝国のサポーターを募るつもりのようです。


 しかし、同紙芝居…後にウメコさん本人から聞いたところによれば、すべて自作なのだそうです。しかも上手。


「…帝国のサポーターになった人たちが皆、次々と故郷に錦を飾る一方、そうでなかった人たちは皆、日がな一日インコに言葉を教え続けるとか、シラス一匹一匹に名前をつけてゆく等々、とっても地味で過酷な労働をさせられる羽目になってしまったのです。おしまイ」


 輪の端でもって僕も見聞きする中、ウメコさんの紙芝居は終了しました。


「さあ、みんなどうだったですか? 帝国のサポーターになる気になったですかネ」


「なるーっ」


「僕もっ」


「私もっ」


 反応は上々。子どもたちを筆頭に、皆さんの間から次々と声が上がります。


 規模は小さくても、この紙芝居によるウメコさんの、プロパガンダならびにアジテーションは大成功のようです。


 ところが、良いことばかりでもなさそうで…


「こら、ねーちゃん。いったい誰に断って、ここで商売しとるんや」


 この空き地に相応しい、なんともレトロな口上。見るからに悪そうな二人組が、こっちへ近づいてきました。

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