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 帰り際、僕のリクエストに応える形で、自身が乗って来たという宇宙船を、ウメコさんが見せてくれることになりました。


 よって、つい今しがた僕はウメコさんと一緒に、それが隠してあるという近くの林の中にやって来たのですが…


「な、ないっ。ワタシの宇宙船が、どこにモッ…」


 これは大変。一体どうしたことでしょう。


「まさか、盗まれたんじゃないでしょうね。ウメコさん」


 だとしたら、誰が乗っていったのか。これまた奇特な人もいたものです。


「こ、このままでは、帝国に帰ることはおろか、交信することすら出来ませンッ」


 がっくりと膝をつくのみならず、しまいにウメコさんは、その場に体育座りで黄昏れてしまう有様。るるるるる〜っ…


 いやま、いかに侵略者といえど、なんだか気の毒になってきちゃいました。


 それゆえ、


「あの、ウメコさん? ここは一応、警察に盗難届を出しておいて、しばらく僕のアパートで暮らしながら、今後のことを考えるというのは、どーですか」


 僕は彼女に提案してみました。


「テン殿の部屋で…と仰るですカ?」


 なお体育座りのまま、ふとウメコさんが、僕を見上げてきます。


 その表情、少し光明が差したかに見えます。


「どうせ、ひとり暮らしです。遠慮はいりませんよ」

 

 まあ、相手が生身の女性ならともかく、女性型ロボットなら問題ないと思います。たぶん。


「な、なんたるご親切っ。地球征服の折には、テン殿を名誉大臣に取り立てていただくよう皇帝陛下ニ…」


「はいはい、大臣でも征夷大将軍でもいいですから、ね」


 どうやら元気に。さらに励ますよう僕は、そのウメコさんの肩に手を乗せました。


「ありがとう、テン殿ッ…」


 おおぅ、はたと立ち上がったかと思えばウメコさんが、ひしと僕に抱きついてきましたぜ。


 さらに、潤む目で僕を見つめてきます。


 これは、国どころか星を越えた恋の始まりか…って、ロボットでしたね、そういえばウメコさんは。とほほ。


「あ、涙が…」


 そうなんです。やがて、その潤む目から一筋の雫が、ウメコさんの頬を伝って流れ落ちたんです。


 ふ~む、涙まで流すとは、なんて精巧なロボットなのだろう…と思いながら、僕はそれを指先で拭ってあげました。


 と、そこまでは良かったものの、次の瞬間です。


「あッ…あわわわわわわわわわわわわ〜ッ!」


 突如として、我が身を襲った鋭い衝撃に、思わず僕は声を上げちゃいました。


 そして気がつけば、レトロなコメディよろしく、全身黒焦げの爆発アフロヘアになっていました。


 そ、そう…世に言う…か、感電・・という現象…ですね。これは。


 え、ええ…ど、どうやらウメコさんには『アース』というものが…つ、付いてなかったみたい…です。


 こ、今度…近くの電気屋さんに行って…と、取り付けてもらうことに…し、します。


 し、しかし…か、家電品かッ…


 がくっ…(って、死んでませんよ)

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