一連托生

「あ~もうこんなの絶対終わらないよ」


 ノワール君は人のまばらになったオフィスで、カチカチとキーボードを叩く。

 彼は今日の分の仕事が終わらず、定時を超えて仕事をしていた。


「もう九時か……ちべすな君ごめんね。後は僕がやっておくから帰っていいよ」


 ノワール君の向かいの机では、彼を手伝っていたちべすな君が真顔でキーボード叩いていた。

 この仕事はノワール君が任されたものだが、ちべすな君は彼を気遣って一緒に残って仕事をしてくれていた。


 ありがたいがさすがにこれ以上の拘束は申し訳ない、それにもう少し頑張れば終電には終わりそうだ。

 そういった事を踏まえて、ノワール君はちべすな君に帰宅を提案したのだ。


 だがちべすな君は、首を横に振り作業の手を止めない。


「ちべすな君、気持ちは嬉しいけどこれ以上は悪いよ。僕の事はいいから」


 ぴたりとちべすな君の手が止まる。

 彼のすんとした顔が、ノワール君の方を見た。


一蓮托生いちれんたくしょう


「いち……ちょっと待って」


 ノワール君はスマホで言葉の意味を調べる。


「えーっと……つまり僕の仲間として一緒に仕事してくれるって事?」


 ちべすな君は深く頷く。


「わかった! ありがとう! なら二人でさっさと片付けて帰ろう!」


 二人は勢いを増して仕事に打ち込み始めた。


 

 ・一連托生いちれんたくしょう


 仲間として行動や運命を共にする……みたいな意味。

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