第3話・地獄転生者を、仕事でいたぶりますわ……おほほほっ

 ポカンとしている、池煮江に卍華は言った。

「状況の把握ができていないようですわね……いいですわ愚民に説明をして差しあげますわ。

心して拝聴しなさい……最初は、池煮江の前々前々前々前々世……遥かな前世での出来事ですわ、その遥かな前世の池煮江がある悪魔を騙しましたのですわ」

 卍華の話だと、ある西洋の町で悪魔を騙して、石橋を造らせたらしい。


「その悪魔……当時は下位の悪魔ですけれど『一夜で川に橋を造ったら、夜明け前に最初と二番目に橋を渡る二本足の者の魂を与えよう』

の約束を真面目に信じて、夜が明ける前に必死に石橋を完成させたのですわ」


「あ、その話知っている……一番最初に渡ったのはニワトリで、悪魔は悔しがりながらニワトリの魂を……」

 卍華は、悪魔の能力でどこからか取り出した電撃ハリセンで、池煮江の頭を叩く……パシッ、ハリセンから迸る電撃。


「やはり愚民は、話しを最後まで聞きませんわね……違いますわ、最初に橋を渡ったのはニワトリではありませんわ……カンガルーの一種のワラビーですわ」

「ワ、ワラビー?!」


「ワラビーから抜いた魂なんて、暴れて暴れて……でも橋を渡ったのはワラビーだけではありませんわ……二番目に渡ったのは、ローランドゴリラですわ」

 卍華のとんでもない話しに、池煮江は声をあげる。

「ゴ、ゴリラ!?」


「唖然とする、悪魔の前で二本足で立って胸を叩いてドラミングする、ローランドゴリラを指差して。池煮江の遥かな前世の者は。

『ほら、二番目の者も二本足で立って橋を渡ったからな、約束通りワラビーとローランドゴリラの魂をくれてやる持っていけ!』

そう言って、悔しがる悪魔を小バカにして笑ったそうですわ……悪魔は暴れるワラビーとローランドゴリラの魂にボッコボッコにされながら、地獄に連れて帰って悪魔仲間の笑い者にされたそうですわ……その時の屈辱から池煮江に、異世界転生を繰り返す【地獄転生】の呪いをかけたそうですわ」


 卍華はどこからか、頭に角を生やした地獄のスカンクを取り出す。

 すでに教室に漂いはじめた、目に染みる地獄スカンクの臭いに、クラスメイトは池煮江を置き去りにして、我先に教室から逃げ出した。


 壁に背中を押しつけて怯える池煮江に、地獄スカンクを持って近づきながら卍華が言った。

「ここから先の続きの説明は、時間がもったいないので実際に死んで異世界転生した異世界でしますわ……わたくしの鼻は臭いを遮断する機能がついた、デビルノーズですわ……デビルノーズは地獄鼻……おほほほっ」

「や、やめろ!」

 卍華が池煮江の顔に、尻尾を上げた地獄スカンクのお尻を押しつける。

「うぐっ、げぉ」

 すでに体が痙攣して、意識が遠退いていく池煮江。

「地獄のスカンクのオナラで死になさい! 池煮江、おほほほっ」

 プシュウゥゥと黄色い霧が教室に広がる。

「ぐぁ、げぇでぃあぁ……げぇ」

 池煮江は断末魔の表情で、もがき苦しみ……オナラで死んで異世界に転生した。

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