第36話 芋虫

「ボクを忘れられちゃ困るな〜〜」

「………誰????????????」

芋虫はずっこけて、壁から落ちた。

ズドォォォォォォオン

「………そんなずっこける?」

ルーはかなり引いた。今までクセの強い人ばかり会ってきたが、この芋虫、見た目だけでなく、性格もキモい………。

「いたた、全く〜〜〜、そこはノリに乗ってよ!も〜、君!ここがどこだかわからないようだね〜〜」

「そうだよ?」

「ここは戦闘狂の溜まり場!ボクは君のようなちびっ子に、危険な目に合わせないように、追っ払っているのに〜、全く、君ももしや戦闘狂かい?」

「さぁ………?でも、結構ここら辺探索したけど、誰もいなかったよ」

「だろうね。ここには2人の悪魔がいるんだ!赤と緑の悪魔で、動物を見つけたらすぐに殺す!おかげでほとんどの動物たちが死んでいったよ。ボクはなんとか逃げて、生き残っているんだけどね!」

「赤と緑……?」

ルーは思った。先程の戦闘で、背後から近づいてきた者が、赤いマントを着ていたような気がする、と。まあその時は戦うのに必死すぎてあまり気にしていなかったが。

「何か心当たりでも?」

「いや⁉︎別に………⁉︎」

「そうかい。って、君、何も気にしてないの?ここにいるのは戦闘狂なんだよ?」

「うん……………………?」

「ボクも戦闘狂だよ?」

「⁉︎」

芋虫は機械の先のアームをグワグワと開閉して威嚇いかくした。

「ラストにふさわしい死に様にしてやる!!!!!!」

芋虫はルーに突っ込んできた。ルーはジャンプし、信号機にぶら下がると、真下の芋虫を踏んづけた。

「そんなのちっとも痛くない!!!!!!」

芋虫は長い尻尾でルーを叩き、体を振るって吹き飛ばした。ルーは壊れた自動車のボンネットをトランポリン代わりに、着地した瞬間にジャンプし、また芋虫を踏もうとする。

「同じ手は通用しないよ〜〜〜」

芋虫は素早く旋回し、アームでルーを掴んだ。

「ぐっ⁉︎苦しい………」

「ハハハ!まるでコバエのようだ!」

芋虫はアームを閉める。ドンドンキツくしていく!

「(なんとかして脱出しなければ!)」

「骨折るの楽しいィィィィィィ!!!!!!」

ルーは芋虫の真上にある細い街灯に目をつけた。あれなら石でも折れる!

ブウッウン

風が激しく揺れるほどの速度で石を街灯に向けて投げた。彼の思い通り、街灯は芋虫の頭に直撃した!その衝撃で、アームが開き、脱出に成功した。

「痛えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!チッ………ハハハ、君もなかなかやるじゃないか!なら、これはどうかな??????」

芋虫の頬から大量のミサイルが。しかも高速で飛んでくる。ルーはミサイルをギリギリまで引き寄せて、ジャンプした。ミサイルは看板に全てぶつかり、看板を落とした。

「(うまくかわされたな)」

芋虫は思ったが、それしか思わなかった。ルーは落ちた看板を芋虫に向けて空中で蹴ったのだ!

「何⁉︎⁉︎⁉︎⁉︎」

ズドォォォォォォオン

芋虫はギリギリアームで看板を掴んだ。しかし、今度はルーが飛んでくる。

「(……いや、無理)」

ズドォォォォォォォォォォォォォォン

アームは両方とも折れ、芋虫の頭に看板が直撃した!!!!!!

「………⁉︎………チクショウッッッ!!!……なかなかやるじゃん⁉︎……で、でも〜⁉︎ぜ、全然痛くないもんね〜⁉︎君のようなガk…じゃなくてキッズとは大違い!!!!!!さぁ⁉︎今すぐ出ていきなよ⁉︎⁉︎」

彼がキャラ作りしているということはなんとなくわかった。ルーもかなり引いていた。

「言ったでしょ⁉︎ここは戦闘狂シティだって⁉︎俺じゃなくてボクは忠告したのに〜⁉︎君はボクに殺されかけていたのだよ⁉︎逃げないんだ⁉︎それとも十二支を目指すのかい⁉︎⁉︎⁉︎⁉︎」

「そ、そうだよ…………?」

「そうかい⁉︎で、でも〜〜〜ボクに勝てないんじゃ、無理だね⁉︎君、よ、弱いから、か、帰った方がいいよ⁉︎お、親御さんにし、心配かけないためい……にもさ⁉︎⁉︎」

芋虫はかなり焦っていた。冷や汗が止まらないし、口調も早口で噛んでいる。目もキョロキョロして、ルーと合わせようとしない。

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