第3章 自然と機械

第35話 廃病院

夜の森ほど不気味なところはない。しかしルーは森の道をのんびり歩いていた。つい先程の戦いの疲れを癒すためと、まだまだ夜明けまで時間があるからだ。

「まさかあの2人が結婚するとはな……。世の中思いがけないことが起きるもんだなぁ」

久しぶりに夜空を見上げて、物思いにふける。

「……おや?」

歩いていると、繁茂した病院があった。廃業してからかなり時が経っているようだ。

「ちょっとここで休んでいこう」

ルーは病院のエントランスにあったベンチに腰を下ろした。常人なら怖がって、逃げ出すだろうが、彼は数々の難敵と戦ってきたツワモノ。静かすぎるところを逆に求めているのだ。

「………すごい病院……でも、なんでこんな森の中にあるんだ??????」

あまりにも不自然すぎる立地である。こんな森の中よりも、浜辺の街にあった方が絶対良いに決まっている。

「まあ…………いいか。もう廃業してるっぽいし、あっても意味ないか」

彼は野菜入りおにぎりを出して食べようとした。すると、奥の方から足音がした。

コトッ、コトッ、コトッ、

ビクッ⁉︎⁉︎⁉︎

「(な、なんだ⁉︎………足音……。いや、怖がっちゃダメだ!そうしたら心霊現象の思う壺だ!)」

ルーは怖さを堪えて、野菜入りおにぎりを食べ続けた。後ろから見れば、平然としているように見えるが、彼の心臓はバクバクなっていた。

「………(だ、大丈夫か……?)」

足音が鳴り止んだ、しかし、気配がする。……歩くのをやめただけで、背後にいる!

シャキッ

刃物が掠れる音がする。ルーはゴクリと息を呑み、手の震えを止めた。しかし冷や汗は止まらない。

その時だった…………。











ズギュンズギュンズギュンズギュンズギュン

いきなり銃声が聞こえた。背後にいる者はすぐに振り向き、刀を振るった。

パンパンパンパンパン

音からして銃弾を刀で斬り落としたのだろう。ルーは今だ!と走った。

「は⁉︎」

背後にいた者は猛スピードにルーへ近づき、刀を水平に振る。ちょうどルーは転んだので、なんとか回避できた。

「⁉︎………」

「(何何何何何何何何何何何何⁉︎⁉︎⁉︎⁉︎⁉︎)」

背後にいた者は下に刀を突き刺す。ルーは横に転がって避け、ジャンプして立ち上がると、相手の背後に飛び、石を同時に3方向へ投げた。

背後にいた者は後ろから飛んでくる石を回転して全て斬り落とした。そして1秒も隙を見せずに、ルーに突っ込んできた!!!!!!

「⁉︎……」

ルーは刀にぶつからないように、相手の顔面を蹴り上げ、続けて石を投げた。

ガチン!!!!!!

相手が刀で石を防ぐ音が病院中に鳴り響く。ルーはその隙に猛スピードで逃げた。

「⁉︎……………!!!!!!」

相手はルーを逃したと思い、銃を撃ってきた者を斬った。その様子を外からルーは見ていた。

「⁉︎……………そ、そんな…。助けてくれたのに……………」

バタン

手を地面につき、絶望する彼。目には涙があった。しかし、泣いてる場合じゃない。死んでしまった人たちの分も自分が生きなければならない。ルーは走っていった。その向こうには、繁茂した都市が見えた。






























やはりルーは都市に来た。ここは砂浜から見えた繁茂した都市。

「………ここはさっき見えたところか。この奥に神社の山があるはず!」

しばらく歩いてみたが、誰もいない。ルーは疑問に思った。

「(なんでこんなに誰もいないんだ?)」

せっかく石を構えてたのに、これでは意味がない。

「ぜーんぜん、誰もいないなぁ」

「そんなことはないさ!ハハハ」

いきなり声がした。ルーは辺りを見渡すが、誰もいない。

「Y座標はどうだい?」

声の主の言う通り、上を見上げてみた。なんとビルの壁に巨大な芋虫がいた。頬の部分に機械が埋め込まれている、大口と鋭い目がついた芋虫だ。

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