第34話 森へ

ヘラクレスキャノンフィッシュは、小さな体を懸命に動かして、浜辺に逃げていた。

「ハァハァハァハァ…死ぬ!しんどい!早く…………早くあれを、注入しなきゃ…!」

彼は遺跡付近までもがきながらやってきた。その時、草木がカザゴソと動いた。

「なんだ?……………風か」

「いや、違う」

「ああ?なんだ⁉︎」

草木から蟹が出てきた。ルーとウォクトが浜辺で出会ったあの蟹だ。

「貴様、めっちゃ小さくなったな。俺は小さな生き物が好きなんだよ」

「そうか……………そりゃよかったな……」

「けどな…………」

「うん……………」

「貴様は大っっっっっっ嫌いなんだよ!!!!!!」

「ハァァァァァァァァァ⁉︎なんだと⁉︎殺してやる!」

「アンテナもあの巨体も持ってない貴様が、俺に勝てると思ってるのか?なかなか自信があるようだな。なら、ちょっと肩揉んでやるよ」

蟹が近づいてきた。キャノンフィッシュは後退りするが、もう間に合わない!!!!!!

「ァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ」

薄汚い声が島中に響いた。













壊れた街に取り残された、ルーとウォクトとナマジュ、スクイックス。

「我々は、結婚することになった」

「ええ⁉︎⁉︎⁉︎」

ウォクトがなんと!ナマジュと結婚することにしたのだ!戦いの中で、友情を超えた何かが芽生えたらしい。

「……そ、そうなんだ……。お、お幸せに」

ルーは戸惑った。あまりに衝撃的すぎるからだ。ウォクトが話し続けた。

「拙者はこの街で暮らす………。だから、十二支は一旦休止することにした。ルー、今夜は感謝する。お主がいなかったら、拙者は今生きていないだろう」

「そっか…………、そうだね!でも………ウォクトも、強いよ!君がいなかったら、僕はヘラクレスキャノンフィッシュに勝てなかった。ありがとう」

「そうか」

「でも、やっぱりナマジュさんが1番強いwwwww」

「そうだよな」

「そ、そうですか⁉︎………あ、ありがとうございます」

3匹は笑い合った。気まずそうにしているスクイックスは話題を変えた。

「おい、ルー。お前は十二支をまだ続けるつもりなのか?」

「そうだよ」

「そうか………頑張れよ!俺も十二支を目指しているんだ。……けど、もうちょっと休んでから出かける。疲れたよ、いい加減。お前は先行ってろ」

「うん、待ってるよ!スクイックスも、頑張って」

ルーは森の中へと足を踏み入れた。見えなくなるところまで、手を振り続けた。

夜空には赤い蝶がヒラヒラと舞う。今回の戦いを讃えているようだった。

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