第30話 大罪魚

その時、街の方が急に明るくなった。尋常じゃないほどの明るさで、かなり距離が離れているはずの遺跡にいても眩しく感じる。現地にいたら失明してしまいそうだ。

「……流石に明るすぎないか?」

「………⁉︎……へ、ヘラクレスキャノンフィッシュです!!!!!!」

ナマジュが叫んだ。

「何⁉︎やはり遺跡で戦った彼はヘラクレスキャノンフィッシュではなかったのか」

「どゆこと?ってか、ウルトラジュエルもフェライクもいなくなっちゃったから、どうしようもできないじゃん⁉︎」

ルーが焦った。ウォクトは彼を落ち着かせるが、だからといって街に行かないわけにはいかない。ここで逃げてしまったら、あの蟹が…………。

「……どうする……?」

「行くしかない。……浜辺で出会った蟹を覚えているか?」

「そういえば……覚えてるよ」

「彼があの街にいる。………スクイックスとナマジュは街に取り残された人々を避難させろ。拙者とルーはヘラクレスキャノンフィッシュを倒す」

「………しゃあねーな。主役を譲ってやるよ!!!!!!」

「わかりました」
























街は燃えていた。家が焼き尽くされ、動物たちの死体がそこら中に転がっている。

「………なんて悪臭……。ウォクト、なんかヤバそうだけど…」

「わかっている。しかし、見過ごすわけにはいかないだろ。強者だけを求めてはいけない。そう思わないか?」

「………ちょっと言いたいことはよくわからないけど、ここで逃げちゃダメだ!十二支になるためにやるしかない!!!!!!」

ルーはウォクトよりも速く走っていった。カンガルーだから走るというよりも跳ぶといった方がいいかもするが。

「(小さな街とはいえ、こんなにも早く火の海にしてしまうとは………。あの蟹は!一体どこに)」

ウォクトは蟹を探し続けた。そして、謝りたかった。

「………………⁉︎……………」

ウォクトは衝撃のあまり、言葉も出なかった。目の前にいたのは……。
















ヘラクレスキャノンフィッシュだった。丸みのある魚で、上部は青、下部は白いフグのような印象を受ける。しかしかなりの巨体で、ウルトラジュエルを取り込んだフェライク並みの大きさだ。そしてなんと、腹の部分?から肉を引き裂いて、アンテナが飛び出ている。

「あれが、ヘラクレスキャノンフィッシュ………。………ところでルーは?」

ルーも同じ場所にいたようだが、向かい側である。声を掛け合って指示すると、キャノンフィッシュを興奮させてしまう可能性がある。

ウォクトは触手にナイフを持った。ルーも石を構えているようだ。

「(行けるか?ルー……………)」

「(行けるかな?ウォクト……………)」

2匹ともお互いが先に攻撃するだろうと思い込み、なかなか攻撃しない。やがて、キャノンフィッシュは2匹の存在に気づいた。

「おいまだ生き残ってる奴いんのかよぉぉぉ!!!!!!はよ死ねやオラ!!!!!!」

「(………かなりの興奮状態だ………でも気づかれちゃったし、やるしかない!!!)」

ルーは家の屋根にジャンプして登ると、もっと高くジャンプして、遥か上空から石を連続で投げた。

キャノンフィッシュは避けることもなく、その場にいたが、突然皮膚を引き裂いて、触手が出てきた。

「⁉︎…」

石は触手に砕かれた。まるでそこに何も無かったかのように。

「やばい負ける!!!!!!」

空中で横に回転し、迫り来る触手を回避するルー。しかし空中での回避は体力を多く使う。

「なんで避けるんだよ!!!!!!クソッ、ガキのくせに生意気だ!!!!!!」

ウォクトはキャノンフィッシュが夢中になっている間に、攻撃しようと向かった。しかし、キャノンフィッシュは意外にも視界が広いらしく、すぐに見つかってしまった。

「誰やお前ぇぇ、ぶっ殺したるわ畜生!」

「やばい、気づかれた!!!」

キャノンフィッシュは腹のアンテナを引っ込めると、鰭の下から別のアンテナを出した。そのアンテナが音を立てて光り出すと。

カーンカーカンカーンカーンカーン

「……?……⁉︎」

遥か上空から、生物の塊が落ちてきた。しかも1個ではない。合計5個ほど落ちてくる!ウォクトは持ち前の瞬発力で全て回避したものの、生物は死んでしまった。相当高所から落とされたのだろう。

「……なんてひどい有様だ。………自分の力で戦え。他の生物を巻き込むな」

「るせぇ黙れタコ!!!!!!俺が良いと言ったら、別に良いんだよぉぉぉぉぉぉ!!!なんだよそのナイフは!お前の力なのか?ああん??????」

「………これは拙者の力だ。剣術…的なものか?」

「ああそうかよ知らんわそんなの死ねやオラ!!!!!!クソタコモドキ!!!!!」

かなり興奮状態だ。そして、残虐的だ。

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