第28話 翡翠波動

エメラルドの飛沫がナマジュの皮膚を切った。とても切れ味がいいらしい。

「…えっと、どうすれば……どうすれば…」

ルーは考えることを放棄していた。意図的に放棄していたわけではない。ただ、目の前の大波に圧倒され、思考回路が止まっていたのだ。

波はフェライクよりも大きくなった。

ザァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ

「………⁉︎……何か聞こえませんでした⁉︎」

「…え?何て言った?」

ナマジュには何か聞こえたようだ。あの大音量のなか、ルーでも聞こえなかった声を聞き取るとは。

「ほら、また。………どこかで聞き覚えがあります」

「マジ?一体だr………って、え⁉︎⁉︎⁉︎」

ルーは海の方を眺めた。遠くから白い物体が飛んでくる!


「……ダイオウイカ!!!!!!」

あの巨体、触腕、尖った頭、そしてあの声。

「よう!また会ったな、カンガルー!!!!!!」

なんとスクイックスの触腕には、ウォクトがいた。

「ルー!助けに参ったぞ!!!!!!」

「ウォクト!!!!!!」

「ウォクトさん!!!!!!」



ズドォォォォォォオン


スクイックスの巨体が外壁に着地した。崩れそうで心配だが、そんなこと思っている暇はない。

「あいつは………フェライク⁉︎」

「ちょっと諸事情があってね……とにかく、彼を止めなきゃ」

「なら、俺の触腕を伝って向こうまで行け」

スクイックスは触腕をフェライクの方まで伸ばした。ルーはその上を駆け抜ける!!!!


「おや、なんだこれ?ん……あ、ルー!なんだよこれ!!!!!!」

「触腕!以上!!!!!!」

ルーはウルトラジュエルに向かって足を向ける。

「勝ち確なんて最低!」

ウルトラジュエルの付近に、いきなり先端の尖ったクォーツが現れた。

「(⁉︎…刺される!!!!!!)」

ルーはその場…空中でまた上昇し、フェライクとクォーツを飛び越えた。

「空中でジャンプしただと⁉︎しかし、空中ではこの攻撃を避けられない!」

フェライクの掌からアメジストが大量に放出された。アメジストはルー付近で爆発し、破片を撒き散らした。

「(この弾幕、不規則すぎるって!)」

ルーは落ちながら破片に向かって石を投げつけた。しかし、下にはエメラルドの海が。落ちてもダメだ。

「…⁉︎…ダイオウイカ!」

「わかってるよ!!!ほれ、触腕だ!」

ルーはダイオウイカが伸ばした触腕に着地し、すぐにジャンプした。

上にはアメジストの弾幕…。どうくぐり抜けるのか⁉︎

「簡単だよ!破壊しちゃえばいい!回転蹴り!!!!!!」

彼はバック宙しながら足を伸ばして蹴り上げ続けた。彼に触れた破片は全て破壊され、粉々にエメラルドの海に沈んでいった。

「何⁉︎…どんな足してんだよ!!!!!!」

「終わりだフェライク!!!!!!」

ルーはウルトラジュエルに猛スピードで落ち、足を向ける。フェライクはまたバリアを展開した。しかし、あの猛スピードで、しかもアメジストすらも破壊するルーの蹴りを防ぐことはできなかった。


バキッッッッ

「⁉︎……破壊された⁉︎」

「これで、行ける!」

「……こんなところで、終わってたまるかァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!!!!」

フェライクはルーを手で薙ぎ払い、撃ち落とした。

「ぐわぁっ!」

ストッ

彼は触腕に着地し、フェライクを見つめる。フェライクは冷や汗と、激しい息切れをしていた。

「ハァハァハァハァハァハァ……お前を、見損なった。俺は、唯一、ヘラクレス、キャノンフィッシュを、ハァハァハァ……ハァ…倒せる、英雄だというのに…、俺を、殺そうと、するとは………、いい加減、英雄気取りは、やめろ!」

彼の巨大な手から血液が噴き出した。

「何言ってる。君は、全ての支配者になるんだろう?………………」

「え?まぁそうだな。しかし、唯一ヘラクレスキャノンフィッシュを倒せる英雄なんだぞ。この街を優先するか?俺を倒すのを優先するか?好きにしろ。たくよぉ!せっかく目立てるチャンスなのに…」

フェライクは最後の言葉を小声で言った。ナマジュはそれを聞き逃さなかった。

「目立つ……?目立つってどういうことでしょうか?」

「ああ?なんの話ぃ??????」

「とボケても無駄です。小声で言ったつもりでしょうが、私には聞こえました」

「ほう、耳がいいらしいな。だが、お前には関係ない。こっちの事情だ!!!!!!」

「話してください!!!!!!目立ちたくてやっているんでしょうか⁉︎」

「……………もういい、なんでもいいや。お前のモンスターみたいな見た目も、無駄にいい耳も、全部宝石にしてやるよ。全員、そう、全員宝石だ。その方がいい」

彼の胸の近くのウルトラジュエルが、緑色に光った。

「この戦いに終止符を打とう。さらばだ。翡翠ひすい……波動!」


ブドォォォォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオォォォオォォォオオオオォオォオォォォォォオォオォォオオォォォォオォォォォォォォオオオオオオオオオオオオオオオオ


音がしたかと思うと、緑色の波動がジュエルから放たれた。もう、ダメなのか?

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