第20話 ヘラクレスキャノンフィッシュ

「結局水中にはいませんでしたね。すみません……私が無能な魚で……」

「だから謝るな。拙者の責任であの子を落としてしまったのだ。……フェライクはあれでも一応ペンギンだ。陸上にいるかもしれん」

ウォクトとナマジュは松明がかけられている通路を歩いていた。ナマジュはどうやら陸上でも多少過ごせるらしかったので、ウォクトも問題無いと思っていた。

「あ、扉」

目の前には扉が。ウォクトは軽く開いた。鍵はかかっていないようだ。

「フェライクならこの程度の扉、開そうだ。行ってみよう」

ガチャ

入ってみると、部屋には薬物が入った水槽が置いてあった。そばにはビンが転がっている。

「(なんだここは………)」

「ウォクトさん!」

「薬物ビン……。あまり触らない方が良さそうだ。臭いは………う、なんだこの臭い!今まで嗅いだこともないほどの刺激臭だ」

「ウォクトさん!後ろ!」

「なんだ?………⁉︎」

ウォクトの背後には、太く、長い、まるでリュウグウノツカイのような魚がいた。歯がとても鋭く、水槽の薬物が滲んでいる。

「⁉︎………もしやこいつがヘラクレスキャノンフィッシュ⁉︎」

「ウォクトさん………」

魚はビンをひれで担いでいる。鰭は5組もある。尻尾の先には鋭い棘が。

「おいテメェら。ここどこだと思ってんだ?」

「………ヤバい。ナマジュ、ヘラクレスキャノンフィッシュって、知ってるか?」

「し、知ってます!大罪魚……ヘラクレスキャノンフィッシュ!」

「ヘラクレスキャノンフィッシュ?ハハハ、ヘラクレスキャノンフィッシュとは俺様のことよ。2人とも喰い殺してやるさ!」

ヘラクレスキャノンフィッシュはビンを投げ捨てると、素早い動きでナマジュをめた。

「な、ナマジュ!人質とは……卑怯な!」

「このナマズに一切傷つけずに、俺様を倒せるか?www。やってみろよ、男なら」

「差別までするとは……卑怯な!(ルーがいないのに、拙者はこいつを倒せるのか?)」

ウォクトは焦っていた。今まで戦闘はルーに任せっきりだったからだ。ダイオウイカも、亀も、全てルーが倒してきた。

「(やるしかない!)」

ウォクトは天井に触手を引っ掛け、ターザンのように飛び蹴りした。しかしヘラクレスキャノンフィッシュはウォクトを片手で掴んだ。

「つ、掴まれた⁉︎3mだぞこちらは!タコ最大の種なのに!」

「テメェ、デカさだけが取り柄なのかよwww。ざっこwwwwwwww」

ウォクトは悔しさのあまり、血管から青い血が流れてきた。しかし、目の前の敵には、何もできない。容赦なく投げ飛ばされたウォクト。

「おいおい、こんなところまで来た奴らなんだから、もっと強いのかと期待してたのに、こんな弱いとは……残念だ。では、じゃあなwwwww」

ヘラクレスキャノンフィッシュは口から大量の水を噴き出した。

ブシャァァァァァァァァァァァァァ

ウォクトは伸ばした触手を壁に引っ掛けて、触手を縮めて避けた。ヘラクレスキャノンフィッシュはそれを見逃さなかった。

「逃げれると思うな?」

彼はウォクトの触手に、視認できないほどのスピードで近づき、触手を切り刻んだ。

ブシャァァァァァ

「何⁉︎」

「バカなタコだ。死ぬがいい!!!!!!」

「(ここまでか………)」

ウォクトは浜辺で出会った蟹を思い出した。今思うと、失礼な態度だったな、と。

「や、やめてください!」

ナマジュは命乞いする。

「ああ?なんだテメェ!俺様に喧嘩売ってんのか?ああん?」

ヘラクレスキャノンフィッシュは部屋の外に彼女を投げ飛ばした。

「(……もう、ダメなの………………)」

ヘラクレスキャノンフィッシュは薬物の水槽にビンを沈め、薬物を飲んだ。

「プーーーーーーーーーッ、力が湧いてくる!どう殺そうか。切り刻むだけじゃつまらん。では、吸盤を1つずつ剥いでいくか」

これがヘラクレスキャノンフィッシュ……、なんて強さだろうか。





















ルーはまるで洞窟のような狭い空間にいた。閉所恐怖症にはおそらく1分も耐えられないような狭い空間だ。中腰でなければ通れない。

「(フェライクは…………流石にここには入れないかな?)」

フェライクはかなり小さなペンギンだ。これくらいの隙間なら入れそう。さらに彼はトラブルメーカーなので、こういうとんでもない所に行きそうだからだ。

しばらく進んでいると、謎の廊下に出た。扉も何も無い。かなり不気味である。

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