第17話 フェライク
流石にルーも正気を取り戻したようだ。
「ねぇウォクト、やっぱやめた方がいい?」
「ああそうだ」
「……だってさペンギン君。ごめんね、これで元気出して」
ルーは野菜入りおにぎりをペンギンにあげた。しかしペンギンは諦めずに、遺跡へ行きたいと言う。
「だから、お主だって死にたくないだろう。一体なぜ遺跡へ行きたいのだ」
ペンギンは一瞬戸惑うと、辺りをキョロキョロと見渡しながら話した。
「……ヘラクレスキャノンフィッシュって知ってる?」
「へらくれすきゃのんふぃっしゅ?」
「そう。この大陸の沿岸部に巣食う怪物。毎日そいつに襲撃されてるんだ、この街は」
「ほう、だからどうした?」
「あのね、僕、そいつを倒して、この街を救いたいんだ!でもそのためには遺跡の宝物で強くならなきゃいけないんだ」
ペンギンはポーチから日記を取り出した。
「このページから四隅に今日犠牲になった人の名前を書いてるんだ。今日は6人死んだ」
「……………⁉︎」
およそ200ページにも及ぶ犠牲者の名前は、ルーとウォクトの心を苦しめた。
「………ならば我々でそいつを倒すしかなさそうだ。行けるか?ルー」
「……………多分……」
「ダメ!ヘラクレスキャノンフィッシュはただの凶暴な魚じゃないんだ!この世の生き物とは思えない力と、さらに空間を操る能力も持っているんだ!」
「⁉︎⁉︎⁉︎⁉︎」
「ウォクト………これ、本当にやばいんじゃない?」
「…………遺跡…………行くのか?」
「遺跡にある宝物はウルトラジュエルというもの。その宝石は生命の力を最大限まで上げる力があるんだ!だから行かなくちゃいけない!」
「………なんか遺跡の方が安全そう」
「しかし遺跡にそいつは住んでいるんだろ?」
「大丈夫!ヘラクレスキャノンフィッシュは昼行性で、夜はどんなにうるさくても寝ていられるから!」
ペンギンは笑いながら言った。幸い客がウォクトとルーとペンギンの3匹だけで、店員も部屋の奥で皿洗いしていたため、誰にも聞かれなかった。しかしウォクトは疑問を持つ。
「(何か引っかかるな……。いや、気のせいか)」
「じゃあ、とりあえず1回行ってみようか。ウォクト〜」
「ん⁉︎ああ、なんでもない。まぁ、行くだけ行ってみよう」
3匹はレストランを出ていった。
「ってか君ってなんて名前なの?」
「僕?フェライク!よろしくね!!!!!」
3匹は遺跡の目の前に来た。不気味な雰囲気で、周辺にはビンが何本も散らばっている。そのビンの中には怪しげな液体が。
「(何これ………)」
「(とても不気味な空間だ。大丈夫なのか?)」
「(ビンだらけだなぁ)」
3匹ともあまりの衝撃に言葉を失っている。やがて、遺跡の入り口に着いた。
「良いのか?入っても」
「うん。……………大丈夫!多分!」
「(多分は自信満々に言う言葉じゃない)」
「…………それじゃあ、行こうか。ゴクリ」
扉はなく、中の様子がよく見えた。短い廊下の奥から光が漏れている。中庭に続いているのだろうか?」
フェライクはウォクトとルーに挟まれて、足を踏み入れた。
「(母さん、父さん、新しい友達ができたよ!この調子でもっと頑張るね!)」
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