第2章 無能な魚の海

第13話 ダイオウイカとミズダコ

ルーは大海原を横断している途中だった。まだまだ月は高いところにある。夜明けまでかなり時間があるだろう。ただ、冬の海を泳ぐのはキツい。

「向こうの大陸まであと少しなのに、こんなところで力尽きたら!ダメだ!!!!!!」

自分を叱って泳ぎ続けるルー。夜空には満天の星が輝き、それらが海面に映っている。幻想的な風景だが、それは誰かの声でかき消された。

「いたぜーーーー!あんなガキなら俺でも倒せる」

後方からいきなり鯖が飛んできた。フォークを持っており、ルーを刺そうとしているのか。完全に立場逆転だ。声を出さずにそっと近づけば、刺せたのにも関わらず、鯖を大声を上げて飛んできたのだ。ルーに敵うわけがない。

「⁉︎…」

ルーは泳ぎながら海面ぎりぎりまでジャンプし、回転しながら鯖を蹴った。

「ぎゃァァァァァァ、痛ぇぇぇぇぇぇぇぇ」

彼方遠くへ飛ばされた鯖はフォークを落としていった。銀でできた新品のフォークらしい。流石にもったいないので、持っていくことにした。その時……。

我輩わがはいの方が足が多いから偉い!」

「いや、拙者せっしゃの方が頭が良いから偉い!」

何やら声が聞こえてきた。ルーが近寄ってみると、ダイオウイカとミズダコが喧嘩をしていた。ミズダコは世界最大のタコだが、ダイオウイカと比べると、言うまでもない。

「やあ、そこで喧嘩してるの?」

「あぁ?ああ我輩たちはイカとタコどっちが偉いか決めてるんだ」

「もちろんお主は拙者の方が偉いと思うだろう?」

ミズダコがルーを期待した。ダイオウイカはデカい触腕をミズダコとルーの間に入れた。

「我輩だよな??????」

「ええ……………」

「おいダイオウイカ。カンガルーが困っている。強要するな」

「お前こそ強要しただろ。勝手に勧誘するな」

どちらも譲らない様子だ。ルーは答えた。

「どっちが偉い⁉︎⁉︎⁉︎⁉︎」

「うーん、僕、クラゲが1番好きなんだよなぁ…………」

どちらでもない答えをすることによって、喧嘩をやめさせるつもりだった。

「………決まらなかった。なら、いよいよ決闘としよう!!!!!!」

「拙者はお主に手を出すつもりはない。これだからイカは好戦的と言われるのだ」

「そう言うお前こそサメを殺したことあるらしいな」

余計喧嘩を加速させてしまったようだ。

「いや、喧嘩はやめろy「だいたいお主は調子に乗りすぎだ。いくらゲームで主人公を務めたからと言って、偉いわけではない!」」

「何?じゃあお前は主役を務めたことあるのか???ねぇだろ?下賤げせんの畜生がごちゃごちゃ言うんじゃねぇよ。ああ?」

ヤクザのように振る舞うダイオウイカ。ミズダコもその巨体と喋り方に圧倒されかけたが、踏ん張っているようだ。

「ねぇ、喧嘩する必要ある?いーじゃんどっちでも」

「カンガルーは競う相手がいないんだな。孤独かwww」

「カンガルーを巻き込むな。我々で解決すべき問題だ」

「だから黙れよバカタコ!!!!!!」

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