第12話 別れ

「………ねぇ、ねぇ、ねぇ」

「………………?」

目を開けると、そこにはルーが。

「……起きたか」

「………なんだよ………冷やかしに来たのか?」

「違うよ。………はいこれ」

ルーは野菜入りおにぎりを前に出した。

「………なんだ?これは?」

「野菜入りおにぎり。一緒に食べよう」

「……お前……、儂は敵ではないのか?」

「敵?まぁ確かにそうだけど、けど、昨日の敵は今日の友?って言うでしょ」

「………お人好しだな」

「いやぁ、別にそんなつもりは無いんだけどね。だけど、戦いの後くらい皆んなで美味しいもの食べようよ。野菜入りおにぎりはまだまだあるし」

「……………あ、ありがとう」

ルーはメガトンヒポポタマスの口元に寄りかかりながら座った。メガトンヒポポタマスもおにぎりを食べようとしたが、右目が石に直撃したために、失明していた。そのためおにぎりの距離感が掴めない。横倒しなので尚更。

「………なぁ」

「何?」

「………舌、出していいか?」

「………………………」

「(やはりダメなのか)」

「………うん、良いよ!」

「……………………………」

彼は黙って舌を出した。ルーはおにぎりを乗せた。

「…………捕食なんてなんの取り柄にもならないんだな」

「………なんか言った?」

「いやぁ、なんでもない」

彼のガン開きだった目も、だんだんと落ち着いてきた。

「あ、蝶」

「おお、本当だ」

赤い蝶で、旅に出た直後に出会したあの蝶に似ている。ヒラヒラと舞う姿は、ルーたちを褒めているようにも見えた。




























ルーたちは森を歩いていた。長居しても王になれないので、30分も経たないうちにメガトンヒポポタマスの元を離れたのだ。

「フォッキーさんとフォクさん、一旦実家に帰るそうですよ。怖くなって、もう一度親の顔が見たくなったらしくて」

「そっか〜〜。まぁあんな戦い経験したら、そりゃそうなるよね」

「(自分が1番活躍してたのに……?)」

2匹は海辺に着いた。潮風と波の音が気持ちいい。夜なので月の光もよく見える。

「あの向こうに目的地があるんだね」

目的地の神社は海の向こう。船が出るのを待っては、朝になってしまうので、泳がなければならない。

「⁉︎………いえなんでもありません!」

「どうした⁉︎ってかまだなんも言ってないけど⁉︎」

「いや、あの、その、僕、金槌かなずちなんです!!!!!!」

「ぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ⁉︎」

確かに鹿の体型はどう考えても泳ぎやすいとは思えない(知らんけど)。ティアは細かく足踏みした。

「そ、そこまで焦らなくても。じゃあ朝まで待つ鹿しかないんじゃない?」

「面白くないですよ!!!!!!」

「いや勝手に作者が漢字に変えたんだよ!」

ここで喧嘩しててもしょうがない。結局ルー1人で海を渡ることにした。

「とりあえず、じゃあ向こうの大陸でね。見てよ⁉︎僕が戦っている姿を!」

「わかりました。お達者で!!!!!!」

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