第三話 帰り際の夕暮れ
それから部活が終わるまで、結局彼とは話しをすることがなかった。
何を話せばいいのかも分からず後悔ばかりしている間に、とうとう下校の時間になってしまった。
「家に着いたら彼に連絡しようかな」
と考えつつ、なんとLINEを送れば良いのか分からないでいた。
「まって!!」
「今朝はごめん!」
そこには酷く息の上がった彼がいた。
体で大きく息をしながら頭を下げている彼を見て、私だけが彼に宿題を見せたかった訳ではなかったのだと知った私は、とても嬉しくて瞳には涙が溜まっていた。
「怒ってないからいいよっ」
「もう、部活後にそんな走って(笑)」
悲しい気持ちと後悔が晴れ、なぜか途端に恥ずかしくなった私は、笑いながら怒ったふりをして誤魔化した。
その時の空はとても綺麗で黒の中に紫の混ざった神秘的な色だった。
彼と居ると良いことも悪いことも綺麗に見える気がして、彼ともっと一緒にいたいと感じた。
彼が一緒に帰ろうと提案してくれた。
私は嬉しくて俯いたまま返事をした。
時間も遅いということで彼が家の近くまで一緒に来てくれる事になった。
私の家が遠いのを伝えると
「良いよ、まだ話したいし」
と言って彼は微笑んだ。
今日一日話せなかった分、彼に話したい事が山ほどあった私は言った。
「じゃあ......お願いっ」
日中話さなかったのを助走代わりに、二人の会話はとても弾んだ。
彼との会話はいつもこうだ。最初は何を話していいのか考えていても、気づいたら言葉が溢れ出てくる。波長が合うとはこの事を言うのだろうか。
暫くして私の家付近に着いた。
「もう終わりかぁ」と名残惜しい気持ちになった私に彼が言った。
「そういえば、今日の夜電話する?」
とても嬉しくなった私は舞い上がるような気持ちだった。
「もちろん! またLINEするねっ」
そう私が言うと2人は別れた。
こんな日が続けばいいなぁと思った。
家へ帰り食事や入浴を済ませる。
すぐにLINEを送ったら、楽しみにしてたのが丸出しのようで、私は連絡するのを少し後にすることにした。
彼は私の連絡を待っているだろうか。
そう考えている時間がとても楽しく、心弾んだ。
送るのはもう少し後にしよう。
あの夏の落し物 どどめ @e6869b
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