第二話 いつもの通学路
ジリリリリッ、ジリリリリッ
「もう朝か......」
目覚まし時計に活動開始の時間だと告げられた。結局あの後ほとんど寝る事が出来なかった。
とりあえずカーテンを開ける。
「うわっ」
あまりにも元気すぎる太陽さんを前に寝不足の私の目は思わず閉じた。
今日も日差しがすごい。最近は梅雨が明けた直後なので、雲ひとつ無い快晴の日がやたらと多い。
朝になったのに、未だに私の頭の中は彼への思いで充満していた。
昨日から私は少しおかしい。
今までこんなにも男の子の事が頭から離れないなんて事は無かった。
昨日のあの電話からずっと、私の鼓動は落ち着かない。今までに味わった事の無いジャンルの苦しさに、エラー音を鳴り響かせているかのようだ。
「とりあえず彼にLINEを送ろう」
何がとりあえずなのか不明だが、彼に要件も無いのにLINEを送ろうと思ったのは初めてだった。
その後、身支度を整えて家を出た。
私の家は学校から少し遠い。
学校に毎朝通うのも一苦労だが、今日はなぜか足取りが軽かった。
学校まであと数分の所で彼に会った。
まだ私の心は準備不足だった。きっと神様の嫌がらせだろう。
「お、おはよう」
彼が言った。なぜだか今日の彼はいつものような有り余る元気がなかった。
それなのに私の心は必要以上に動く。
今日の私はやっぱりおかしい。
「おはよっ」
風に吹かれる
数秒程の沈黙があり彼が今日の一時間目は何か聞いてきた。私は前回のその授業で宿題が出ていたのを思い出し、宿題は済ませてあるか
「やってないや」
「見せてくれてもいいよ?」
少し笑いながら彼が言った。
いつもと様子の違う彼に、なぜか少し意地悪をしてみたくなった私は言った。
「えー、どうしよっかなぁ」
「うそうそ、いいよ!」
どうしようかと言った瞬間の彼の驚いた顔が少しだけ愛おしく思えた。また、その後教室で宿題を見せることを考えると、宿題をやっておいてよかったなと思った。
実は昨日、と言うより今日。夜明けまでずっと彼の事で頭がいっぱいだったため宿題の存在を忘れていた。深夜、奇跡的に思い出した私は急いで宿題を済ませたのだった。
宿題を見せる側の割には随分ださい。
まぁ彼は知らないし結果オーライだ。
そしてしばらく会話をしていると学校に着いた。初めてもっと学校が遠ければ良いのにと思った朝だった。
下駄箱で靴を履き替えていると、彼の友達が早歩きで彼へと寄ってきた。
ゲームの話でもしているのだろうか。すると彼は友達と一緒に教室へと向かって行ってしまった。
彼らを大きな声で呼び止めて、宿題のノートを渡しに行く勇気が今の私には無かった。それを私は、授業中も酷く後悔したのであった。
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