おっぱいのアリシア

かささぎの渡せる橋

おっぱいのアリシア

 ガレム聖国の聖都で便利屋のような役割をしているのが、美貌の女傑「おっぱいのアリシア」である。おっぱいだけを丸出しにした服に身を包み、名乗る必要があれば


 「我が名はアリシア・ハンコック……またの名を『おっぱいのアリシア』だ。剣に代わってこのおっぱいに誓う、おっぱいのように優しくも力強い心で、おっぱいのように平穏な日々を守ろう」


 と剣を掲げる代わりに胸を張っておっぱいを上に向け高く母乳を噴き上げる姿が、街の戦士「おっぱいのアリシア」のトレードマークだ。アリシアのおっぱいの前では、みな平等だ。大の大人も幼い子供も、荒くれ者も真面目な商売人も、アリシアのおっぱいに癒され、助けられている。

 アリシアへの頼み事は多岐にわたる。理想の柔らかさのパンを作るため参考としておっぱいを揉ませてほしい、とか、飼い猫に元気がないため母乳をもらいたい、とか、母親が不在の間子供におっぱいで遊ばせてやってほしい、とか、新しい菓子を思いついたから材料として母乳を分けてほしい、とか風変わりなものも含めて様々だが、一番得意なのは喧嘩をおっぱいで止めることである。

 こんなことがあった。

 ある夜、街角で酔っ払い同士が揉め事を起こしていた。女がどうとか、お前の顔が気に入らないとか、些細なことである。帰り道にたまたまそこを通りがかったアリシアは、


 「ほらどうした?何かあったのか?」


 と仲裁に入る。酔っ払いの片方が


 「何だテメエ……」


 とアリシアに掴みかかろうとすると、アリシアはすぐさま腕を掴み軽く捻って


 「私は『おっぱいのアリシア』だ。剣に代わっておっぱいで不幸を断つのが仕事」


 と名乗り、酔っ払いの手に自身のおっぱいを掴ませ、


 「はいはい、とりあえず二人とも、私のおっぱいを揉んで落ち着け。はい、ぐいっと揉んで……緩めて……ほら柔らか~い……はいもう一回、ぎゅ~……」


 酔っ払いたちにゆっくりおっぱいを揉ませていると、おっぱいの柔らかさで怒りが癒されたのか、次第に彼らも大人しくなっていった。


 「で?どうして喧嘩になった?」


 アリシアが事情を聴くと、つまるところ街で同じ女を引っかけようとしたのが原因で女の取り合いになり、いつの間にか女そっちのけで自分たちの争いに終始してしまったらしい。


 「はあ……これに懲りたらもう二度とこんなことで争うな。深酒も禁止だ。我を忘れるほど飲んでるようじゃ、女も寄り付かんぞ……仲直りの印に、私のおっぱいでも飲んでいけ。高貴な人々の間では、同じおっぱいを飲んだ者同士は強い絆ができると決まっているからな」


 そうしてアリシアは酔っ払い二人に自分のおっぱいを片方ずつ与えた。アリシアのおっぱいは薄甘く慈愛に満ちた母乳を惜しげもなく噴き出し、酔っ払いたちの喉を潤し、精神を落ち着かせた。


 「よ~しよし、偉い偉い。おっぱいいっぱい飲んで、強く優しく逞しく、だからな」


 アリシアにそう言われるのは、不思議と嫌な気分ではない。アリシアのおっぱいを吸う度、母乳だけでなくアリシアの博愛や力強さまでが溢れ出してくるようだった。


 「ふふっ、お前ら、幸せそうな顔をしておっぱいを吸ってるぞ?そうそう、そんな気持ちが一番だ」


 と声を掛けながら、アリシアはしばらくおっぱいを吸われ続けていた。


 「よし、じゃあ気をつけて帰れ。じゃあな。この『おっぱいのアリシア』、何かあればいつでも頼るといい」


 喧嘩がすっかり治まったのに安堵の笑みを浮かべると、アリシアは自宅への帰り道に戻るのだった。


◆ ◆ ◆


 街には「おっぱいのアリシア」に助けられ、アリシアのおっぱいを飲んだ「乳兄弟」が数多くいる。子供たちは特に多くが乳兄弟同士だ。

 子供たちの遊ぶ輪の近くを通りかかると、


 「あー、おっぱいのアリシアだ」

 「おっぱいおっきい~!」

 「ふふっ、子供は今日も元気なものだな」

 「ねえねえ、どうしておっぱいのアリシアはおっぱい丸出しなの?」

 「おっぱいが兵士の武器みたいなものだからだ。兵士が剣や槍を奮って戦うように、私もおっぱいを武器に人助けをしている。兵士は戦場で剣を抜くが、私にとっては街が常に戦場のようなものだから、いつでもおっぱいを露出させて人助けに備えているわけだ」

 「お乳出るの~?」

 「勿論だ。母乳を飲むと人は笑顔になるものだ。お前らも飲んでみるか?美味いぞ?」

 「やった~、いただきます」

 「ちょっと待て、オレが先だって!」

 「その前に触らせて~!」

 「ほら!折角のおっぱいの前だ!喧嘩しない!順番で交代な!おっぱいは逃げないぞ。おっぱいは二つあるから、二人で片っぽずつだ。お前はこの間一番搾り母乳だったから、今日は最後で我慢な」


 と、こんな具合で、「おっぱいのアリシア」は子供たちの人気者である。

 こんなことがあった。

 ある晴れた日のことである。アリシアが市場で買い物をしていると、一人で静かに泣いている男の子がいた。アリシアは心配になり、


 「一人か?」


 と屈みこんで声を掛けたが、男の子は


 「う……ぐすっ……」


 と泣くばかりだった。そこでアリシアは身体を揺らし、


 「はい、おっぱいぽよんぽよん」


 とおっぱいを振ったり、下から捧げ持って


 「ほら、むにむに……」


 と揉んでみせたりした。男の子は揺れ動くおっぱいを少し面白がってくれたようである。


 「さあ、母乳も飲もうな。元気が出る」


 と、アリシアが男の子に母乳も飲ませると、男の子は話ができるようになった。


 「そうか、母親と逸れたか……大丈夫だ。私がなんとかしよう」

 「本当に……?本当に見つけてくれるの……?」

 「ああ、このおっぱいに誓って」


 そう約束したアリシアは往来の中でも特に人通りが多い場所を見繕い、


 「我が名は『おっぱいのアリシア』!私の名を、おっぱいを知る者はいるだろうか?」


 と声を上げ、母乳を噴き上げてみせる。すると子供が駆け寄ってきた。どうやら「おっぱいのアリシア」から母乳を与えられた乳兄弟だったようで、


 「あっ、『おっぱいのアリシア』!この間はありがとう!」


 と声を掛けてきた。アリシアはその子を覚えていた。確か花屋の子で、花の育ちが悪いためアリシアの母乳を花にやってみてほしいという依頼だった。アリシアは子供に


 「この子がな、母親と逸れてしまったそうだ。母親が見つかったら、私の家に来るように伝えて欲しい」


 と頼み、


 「では、礼は……前払いがてら、おっぱいを」


 と、報酬代わりに母乳をあげた。


 「他にも協力する者はいないか?もし協力するのなら、このおっぱいを飲ませてやろう」


 と言うと、何人かはアリシアのおっぱいを飲み、母親探しに協力すると申し出た。

 アリシアはこれを何箇所かで繰り返し母親探しを依頼すると、自宅に帰る。ずっと不安そうだった男の子は、アリシアの息子のカレルと娘のマリータが相手になって楽し気に遊んでいた。アリシアはその様子を見て、少し安心感を覚えた。

 しばらくすると、女性がアリシアの家を訪ねた。男の子が「あっ、ママ!」と叫んだので、男の娘の母親であることがすぐに分かった。


 「見つけて頂いてありがとうございます」

 「よかった。私もこの通り母親だからな……子供と離れ離れの心配、不安……子供への罪悪感……そういうものはよく分かる。人より分かりすぎているくらいかもしれない。だから特に困っている子供のことは助けてあげたい。このおっぱいに相応しい人間になれるようにな」

 「おっぱいのアリシア」

 「ん?どうした?」

 「ばいばいの前に、おっぱい飲んでいい?」

 「ああ、勿論だ。母君も一緒に飲むといい。祝杯のつもりでな」


 母親は少し戸惑ったが、息子がアリシアのおっぱいに美味しそうに吸い付き、アリシアが母親に母乳を勧めるので、


 「一口だけなら……」


 と母乳を飲んでみた。確かに「おっぱいのアリシア」の優しさ、強さが染み渡るようだった。気づけば「もう一口……」を繰り返し、母親の方がおっぱいを夢中で吸っていた。柔らかく弾力のあるおっぱいの感触に、何故だか身体が火照った気がした。アリシアは


 「どういう気分だ……?その気分、貴方の息子も貴方のおっぱいを吸っているとき、味わったのかもな」


 と微笑んだ。

 帰り際、アリシアが笑顔で男の子に手を振ると、男の子も名残惜しそうに、角を曲がって姿が見えなくなるまでアリシアに手を振り返していた。


◆ ◆ ◆


 「おっぱいのアリシア」を慕い、頼る者は性別を問わない。

 こんなことがあった。

 うら若い女性が、「おっぱいのアリシア」を見込んでと訪ねてきた。女性はアリシアを見るなり


 「うわあ、やっぱりおっぱい大きい……前に街でお見掛けしたんです。本当におっぱいを隠さないんだって……」


 と嘆息する。女性はしばらくアリシアのおっぱいに目を釘付けにしていたが、やがて


 「あの……アリシア様みたいに綺麗な身体になるには、どうしたらいいですか?」


 と、意を決したように尋ねる。アリシアは、


 「食事に気を遣い鍛錬を怠らず、常に強い心を……という話をしに来たわけではなさそうだな。綺麗な身体になってどうしたいんだ?」


 と訊き返してみた。

 そこで女性がぽつぽつと話すところによると、女性は結婚願望があるものの、男性との交際が上手く行かないことが多く次第に自分に自信がなくなってきた。女性は自分の身体に魅力が少ないのではないかと思い悩むようになり、常におっぱいを惜しげもなく衆目に見せつけ自信満々な「おっぱいのアリシア」に、身体と精神を鍛えるよう特訓をして欲しいとのことだった。


 「ほう……同性からここまで魅力的だと思われるとは、嬉しい限りだ」

 「あのっ、おっぱい、触ってもいいですか?」

 「ご自由に」


 女性はアリシアのおっぱいを「あっ……」とか「おお……」と声を漏らしながら揉みしだく。時折乳首を弄られ、アリシアは少し高く喘ぎ、


 「ああっ……そこもまた硬さがあっていいだろう?」


 と女性の意に任せた。しばらく揉み続けると、女性はアリシアのおっぱいから手を離す。


 「あの、それで、どうすればいいんでしょう……私もおっぱいを露出するとか……?」

 「ははっ、流石におっぱいを丸出しで街を歩くのは、普通の人には勧められないな。そうだな、特訓……という雰囲気ではないかもしれないが、いい案がある。明日の朝、ここにもう一度来てくれ」


 アリシアは女性にそう約束し、この日は別れることになった。

 翌朝、女性は約束通りアリシアの自宅にやって来た。アリシアは女性を寝室に招き入れ、裸にしてベッドに横たわらせる。


 「今日は、何を……?」

 「身体の手入れだ。母乳は肌の美しさを向上させるという。私の母乳を身体に塗って、おっぱいで揉み解す。おっぱいに身を任せろ」


 こうして、アリシアによる女性へのマッサージが始まった。


 「まずは背中からやっていこうか。見えないところから綺麗にしていくことが大切だからな」


 と説明し、アリシアはうつぶせにした女性の背中から臀部にかけて大胆に母乳を振りかけ、身体ごとおっぱいを押し付けて滑らせていく。


 「気分はどうだ?」

 「はい、気持ちいいです……おっぱいがムッチリしてて、母乳ですべすべ……」

 「それは良かった。流石私のおっぱい」


 アリシアが自身のおっぱいを自画自賛する言葉に、女性は少し面白くなる。


 「よし……次は手足に塗っていこう」


 アリシアは女性の右腕の付け根から手先にかけて何回も母乳を出し、おっぱいで挟みこんで母乳を塗り込みながら解した。おっぱいが手に向かうと、女性はつい手を握り込んでおっぱいを揉んでしまう。アリシアはそれを制止することなく、女性の手におっぱいを任せた。アリシアは左腕にも同じことをし、脚にも付け根から足先まで母乳を浴びせ、おっぱいでマッサージした。


 「気分も高揚してきたのではないか?」

 「はい!アリシア様のおっぱいに、こんなにしてもらえるなんて……」

 「ふっ、私のおっぱいは誰にでも愛情を与える。さて、今度は向かい合って胸と腹だ。おっぱいをおっぱいで揉みしだく。面白いぞ?」


 間近に向かい合わせになると、よりアリシアのおっぱいの質量が迫り、女性は自分の小ぶりな―アリシアは十分人より大きいと思うが―おっぱいと比べて気後れしてしまう。


 「でも、私のおっぱいは……」

 「どんなおっぱいでも、自信を持って張っておけ。私のおっぱいの大きさが羨ましいかもしれないが、私は君のおっぱいの若さを羨む。おっぱいのいいところは人それぞれだ」


 そう女性を制止すると、アリシアは女性の右おっぱいに母乳を振りかけ、アリシア自身のおっぱいで挟み込んだ。少し撓んだ母のおっぱいと、強く張り詰めた乙女のおっぱいが異なる柔らかさを互いに伝え合う。右おっぱいが終わると、次は左おっぱいだ。


 「ふふふっ、ほら、君のおっぱい、私のおっぱいを強く弾き返しているぞ」

 「ううっ、恥ずかしい……」


 おっぱいをおっぱいで揉んでいる光景は、どことなく滑稽で、楽しい遊びのようだった。


 「さて、最後は顔だ。気合を入れてくれ」

 「はっ……はい!」


 アリシアは、女性の頬と額に母乳を出し、顔全体をおっぱいで包み込む。


 「ああっ!柔らかい!アリシア様のおっぱいを一番感じます!」

 「ほう、そんなに嬉しいか……なら私も気合を入れて塗り込んでやらねばな……」


 女性はアリシアのおっぱいから放たれる甘い香りにうっとりとなり、呆然としながらおっぱいの感触を受けていた。おっぱいで顔を挟まれ、全身でおっぱいの、母乳の匂いを吸ってみる。


 「ふう……こんなものかな」


 アリシアが顔からおっぱいを離した。女性は名残惜しそうにしながらも、先ほどまでおっぱいに包まれていた自分の肌を撫でてみる。


 「すごい……なんだか肌が輝きを増したような……」

 「そうだろう?では、仕上げに母乳を飲んでみろ」


 と、アリシアは女性を起き上がらせ、おっぱいを女性の口の前に突き出す。女性はアリシアのおっぱいに夢中で吸い付いた。


 「ほ~ら……私のおっぱいの力が君の中に入るのを感じるだろう……?このおっぱいみたいに、優しくて、柔らかで、強くなれるように……そう思いながら飲むんだ……」


 女性はアリシアの言葉に応えるかのように、アリシアの母乳を口の中で転がし、喉に送り込んでいく。


 「んっ……もう終わりか……」


 アリシアのおっぱいから母乳が出なくなっても女性はしばらくの間、甘えるようにおっぱいを吸い続けていた。




 「ん。これで君は私のおっぱいの力で、美しい身体と強い精神を手に入れた!母乳を飲んだおかげで体調もすこぶる良好なはずだ。今日は背筋を伸ばして真っ直ぐ立ち、歩いてみろ。大丈夫、私のおっぱいを信じろ」


 アリシアは女性にそう言うと、女性を街に送り出す。


 「ありがとうございました、おっぱいのアリシアさん」


 そう言う女性の姿は、昨日よりもはるかに輝いて見えた。

 後で女性と再会して聞いたところ、女性はその日のうちに素敵な男性との出会いがあり、順調に交際しているとのことだった。女性は


 「アリシアさんのおっぱいのおかげです!」


 と礼を言ったが、アリシアは


 「いやいや、私は大したことはしていないさ。私のおっぱいから、君が勝手に自負心や自分を曝け出す大胆な気持ちを読み取ったんだよ」


 と笑った。


◆ ◆ ◆


 「おっぱいのアリシア」は、いつでも自分のおっぱいを必要とする者に奉仕する。大きな質量を持ち綺麗に曲線を描くおっぱい。しかし、子供を育てるために使われ少しだけ撓んだ刺激的なおっぱい。そして栄養たっぷりの母乳をいっぱいに溜め込んだおっぱい。この美しさ、厭らしさ、優しさをふんだんに纏ったおっぱいが、いつも街の平穏を守っている。

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