じいじ 3





「待って下さい、それだとうまく行かない気がします。」


藤井が言う。


「でもそうしないと採算が合わないんだよ。

少しは無理しないと。」


桂が書類を前にして言った。

林太郎は腕組みをして考えている。


「だがなあ、桂、無理は結構だが失敗したらどうするんだ。

だれが責任を取る?村人に負担してもらうのか。」


林太郎が静かに言った。


「いや、それは……。」


桂が口ごもった。


「お前のその考えは一つのやり方だが、

今はリスクが高い。焦らずに周りを見た方が良い。」

「でも早く若い人も呼ばないと立ち行かなくなるよ。」

「焦るなと言う話だ。」


彼らは美月にはよく分からない話をしているのだ。

隣の部屋で彼女は愛を遊ばせながら聞いている。


桂が部屋を出て来た。

機嫌の悪そうな顔をしている。


「おとうちゃん。」


愛が言うと愛の頭を少し撫でて無言で桂は外に出て行った。

美月は桂が出て来た部屋を覗く。

林太郎と藤井が難しい顔をしていた。


「大丈夫?」


美月が恐る恐る林太郎に聞いた。


「いや、なんともない。」

「なら良いけどお茶入れようか。」

「ああ、ありがとうございます。」


藤井が言う。


「ややこしい話なの?」

「そうなんですよ、まあこちらはアドバイザー的立場ですがね。」


藤井が美月のお茶を淹れる手伝いをする。

この藤井も長い間秘書業をしていたおかげで

かなりお茶を淹れるのが上手い。

彼は冷蔵庫からお茶うけに漬物を出した。


「藤井さん、漬物好きねぇ。」

「はい、それはもう。」


藤井がにっこりと笑う。


「本当に美味しいですよ、材料が新鮮だからでしょうか。」

「ぬか漬けとか藤井さんのはすっごく美味しいもんね。

道の駅で置くぐらい。」


彼の名前の漬物はファンがついているらしい。


「でも、」


美月が心配そうに言う。


「桂もりんじいも頑固者だからどうなるかなあ。」

「ですね。」


藤井もため息をつく。


「本当にそっくりですよ。親子ですねえ。」










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