14-7

 その年の春、僕は異例ということだったが、主任に昇格していた。そして、つばきちゃんは別のスポーツ施設に転属になっていた。どうも、国民スポーツ大会に備えてということらしい。


 つばきちゃんの後釜に入ってきたのは、後藤伸介という青年で大学の時はやはりサッカーをやっていたということだった。それに、市立病院の医局長の息子という触れ込みだった。だけど、僕には、はきはきとした返事をするし、とても好青年で好感を持っていたのだ。


 僕は、前にも増してやることが多くなってきていて、仕事に追われる毎日になっていた。それにつれて、今までのマンションは本庁には少し遠かったので、引っ越しをした。家賃補助は少し減らされたけど、行き帰りに時間を費やすよりは良いかなと考えたのだ。


 そんな中、夏になってタカシから秋に結婚するから出席してくれと連絡があったのだ。相手はと聞くとサナエの名前が出てきた。僕は、しばらく唖然としたと思うが、とりあえず祝福の言葉を言ったと思う。


 式は地元の小さなホテルで行われた。そして、かがみさんも同級生なんだからと、出席していたのだ。子供も預けてきていて、独身みたいに紺色のワンピースドレスで着飾っていたのだ。披露宴の終わりのほうは流れで立食パーティみたいになっていて、僕達高校のグループが集まっているテーブルにタカシとサナエが挨拶に来て


「みんな 今日は ありがとうな やっぱり サナエと居るのが一番 落ち着くからアタックしたんだよ」と、タカシが打ち明けていた。


「シュウも早く いい人みつけてネ」と、サナエは僕とのことも何にも無かったかのようにしらぁーとして言ってきたが、かがりさんが


「あー ダメ ダメ 秀君は宝物でも簡単に逃しちゃうんだからぁー 優柔不断のまんまなのよ」


「かがり・・さん ・・・ 僕は・・」


「なぁに 君のお義姉さんとして 心配してるんじゃない」と、ワイン片手に平然と言ってのけていて、僕は女は強いと感じさせられていたのだ。


 そして、翌春には、つばきちゃんから結婚式の案内状が届いていた。あれから、時々飲みに行くといった間柄だったけど、その時には、そんなこと一言も言っていなかったのに・・。しきりと僕に売り込みを掛けてきていたくせに・・。


 内内で周囲に聞いてみると、お見合いをして、一気に話が進んだと言うことだった。お相手は私立病院に勤務する薬剤師で、両親も薬局を開業しているから、ゆくゆくは継ぐことになるらしい。女って 変わり身が早いなと思っていた。


 僕は、ななのが居なくなってから3年経っていて、肉屋にバイトに来ているようでもなく様子がつかめずに居て、その間は気が抜けたようだったが、仕事が忙しくて、そっちに没頭していったのだ。

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