14-6

 久々に僕は、クラブの女の子のサッカーの練習に参加していた。朝宮監督は歓迎していてくれるけど、指導というより、一緒にやって、時々教えるといった具合だった。心のどこかには、ななの達が来ていないかと期待していたのだが、彼女達の姿は無かったのだ。


 練習を終えて帰ろうとすると つばきちゃんが寄ってきて


「先輩 私 スポーツインストラクターとトレーナーの資格受かったよ 民間の資格だけどね」


「そうか へぇー 頑張ってるんだネ お祝いしなきゃぁなー」


「そうだよ お祝いして! 飲みに連れてってー」


「わかった だけど あんまり 飲み過ぎるなよ!」


 僕達は仕事を終えた後、隣の町の居酒屋で待ち合わせをしていた。僕は、女の子を待たすのは悪いからと、急いで行っていたのだ。


「わぁー 良かったぁ 先輩 まだだったらどうしょうかと思ってたの」


「まぁな 待たすのは悪いからな」


「先輩の そういうとこ好き!」


 牛スジこんが好きだと言う彼女は口に運びながら


「おいしいー うちではお母さんが、臭いって作らせてくれないのよね 両親が二人ともお酒飲まないから これの おいしいのって知らないんだ」


「そうか ご両親はふたりとも・・」


「あー 今 じゃあ なんで私が飲むんだと思ったでしょ 成人式の時 悪友に誘われてからネ そうだ あんとき 私 ふわふわしちゃって 奪われそうになったんだ」


「そう つばきちゃんは飲み過ぎるけらいがあるからな」


「そんなことないよ あれから気つけてる でも、大丈夫だったのよ 友達が守ってくれたから 心配しなくても純潔は守られてるよ この前は先輩だから、調子に乗っちゃったカモネ」


「心配なんて・・それはそれは・・ 今日はほどほどにな」


「でも 前 話したことは覚えているよ 付き合ってほしいって言ったことも 交わされちゃったけどね」


「まぁ そーいうんじゃぁないけど・・」


「いつも 先輩って ごまかすんだからぁー ねぇ 今年 大卒の男の子 新人 入ってくるのって知ってる?」


「ああ 聞いてるよ 体育系の大学だってっな」


「そーなのよ 私 いい加減 年でしょ 早くお嫁に行かせて、追い出そうとしてるんカナーって」


「そんなこと無いだろうー 手が足りないからー・・」


「草むしりの? 手は足りてるわよー 焦ってるんじゃぁないけど、私、ずーと 走ってるばっかーだったでしょ だから ねぇ 先輩 私じゃぁ 本当に駄目? だって彼女にするんだったら、経験して無いほうが良いでしょ!」


「そっそれはー・・ どうでも・・ だけど・・」


「だけどー なに? ななのちゃんのことがが忘れられない?」


「いや もう 済んだことだ」


「だったら 私 先輩がその気になるように・・ 頑張るから・・ ねぇ お正月の時も お母さん 迎えに来てくれたヤン 誰?って聞かれたから 彼氏って言ったの」


「えぇー それは・・」


「うそ! 先輩ですって、ちゃんと言っておいたわよ そんなに・・私が、彼女じゃぁ困る?」


「そんなんじゃぁ 無いって! ただ、僕は 彼女なんていう気にならないんだ」


「だからー 私が その気にさせるって いいでしょ とりあえずでも・・


「うー ・・・ まぁな」


 と、僕は、また、押し切られて中途半端な返事をしてしまっていた。なんと、優柔不断なことなんだろう。だけど、ななのの顔が頭に浮かんできていたのは確かなんだ。初めて、見たときから僕の心に住み着いて、ななのが溌剌となんかしている時とか、一緒に過ごしている時とは、違うんだ。僕には、ななのが必要なんだと。

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