第2話 女装キャラ~非モテ女子の苦悩(その二)~

 悲しき目標……それでもやる気だけは十分にある!


 ファッションはスカートを優先、メイクは常に流行を取り入れ、マツゲは長く! 唇は艶やかに! 

 胸をパットで偽装し、毛量に悩まされた髪も死ぬほどすいて、どうにか肩まで伸ばした。



 こうして7年も努力をした結果――それはあまりに虚しく、報酬(殿方からのまともなお誘い)は1つも得られなかった。

 一方でそんな私を嘲笑うかのように、同性からのアプローチは増えていく。


 会社帰りを狙った待ち伏せや、食事のお誘い、ケータイ番号とメアドが書かれたカードを渡された覚えもある。


 勿論、全て女性からだ……。

 友人や会社の同僚達には「付き合ってみれば?」等とからかわれたが、私は全てお断りをしていた。


 それでも一度だけ、しつこく懇願する女性を回避できずに、ランチデートを余儀なくされる。


 しかも誘ってきた筈の彼女が、まあ喋らない。

 会話は一向に弾まず、9割私が喋っていた記憶しかない、悪夢のような時間だった。


 その後どういう訳か、彼女からの連絡は一切無し。 

 割り勘がマズかったのか? 

 喋りすぎたのか?

 超絶美人だったこともあり、少し残念な気もした。



 そんな経験を繰返しながら悩み続けた私は、ある日とうとう髪を切り、胸パットと濃い化粧を封印――。


 別にを諦めた訳ではない。

 単純に「女装が似合わない」と自覚をしたからだ。


 その事実を私に教えてくれたのは、図々しい女装の男性と、上品な年配女性だった……。



「アンタ後輩でしょ? 牛丼奢ってよ」


 これは居酒屋帰りに始発も出でいない早朝の駅前で、見知らぬ女装姿の男性が私(だけ)に発した台詞。


「えっ……?」


 何の後輩? 何故に牛丼? 言葉の意味が理解できずに困惑している私を見て「あら……違うのね」と、男性は謝罪もなく去って行った。


「……いや、仲間じゃねぇーし!」


 帰宅後――酔いが冷めた頭脳で導きだされた解釈に、私は早朝から深く落ち込んだ。

 

 



 それから2年。

「牛丼の衝撃」から自問自答をしながらも、まだめげずに自分磨きをしていた私。暫く女性からのお誘いもなかったので「ゴールは目前だ!」と確信していた。


 しかし現実と言う悪魔に、容赦は無い。



 ある日、上品で優しそうな年配女性に道を聞かれた。


 親切丁寧に対応を終えた私に、女性は「ありがとう、お兄……」の先から、まさかのフリーズ。困り顔でこちらを見つめた――。


 いつまでもが出せない女性。

 私は笑顔で軽く頷いて、その場を後にした。


「もうやめよう……」 


 私は挫折ではなく、ようやく理解ができた。

 そもそものポテンシャルが皆無なのに、努力が報われるなんて幻想に過ぎなかったのだ。


 ならば無理に飾らず、潔く中身で勝負をしようじゃないか! 


 こうして中身もまあまあ男性寄りな私は、殿方からモテない人生にさらなる磨きをかけた……。

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