第3話 学問と二次創作

 中学校の朝の読書時間に、野外スケベ(非常に柔らかい表現)が堂々と載っている小説を持ち込んでしまったと前回書いたと思うが、これに関して父は別に「娘にスケベ見せたろ!」と思ってやったわけではないと先んじて弁解しておこう。


 一応、小学校の先生をしている母に「これは私が読んでいい本なのか」とは聞いていた。ついでに一緒に父を怒ってくれという気持ちもちょっとあった。

 母はぱらっと読んで「作者がこのお話の中で必要なシーンだと思っていれたものに、ただ『エロだ!』と断じて終わるのはもったいなくない?」と言って読書続行を勧めた。母も読書家だった。なんと我が家に味方はいなかった。

「それはそれとして、朝の読書タイムにエロ本を持ち込んでしまったと思って慌てた気持ちは分かる」と同情はしてくれたが。


 実際にラプソディシリーズは名作だった。寝食忘れるほどに没頭して読みふけった。愛を育むシーンは冒頭のみならず色々な場面で出てはきたが、そこは薄目で読みつつ完読した。アクメドさんがはちゃめちゃ好みなのもあった。

 読み終わって力尽きるように眠り、起きると一時間しか経ってなくて「や~ちょっと昼寝したなぁ」と思ったら、なんと二十五時間寝てたと母から聞かされた時は驚いた。腹が減っていたので死ぬほど飲み食いした。


 ラプソディを読破して気づいた事がある。それは、ファンタジーをしっかりした世界観で書くにはめちゃくちゃ勉強が必要だということだった。

 地理、生物学、言語学、戦争の歴史や風習などなど。人をのめり込ませるほど説得力のある幻想を提供するには、それを裏打ちする知識が必要なのだ。


 私の成績は普通だった。そこで私は思った。



「ファンタジー書くの、や~めよ!」



 勉強が嫌いな中学生だった。




 ***




 才女でオタクな友人が出来たと前回書いたが、その子と縁を結んでくれた友人がオタクになった。

 そんな二人の友人に挟まれるとどうなるか。



 ――もれなくオタクの誕生である。



 高校生になった私は、とある漫画が大好きで、ついに二次創作というものに手を出していた。NLにどはまりしていたのだ。なお、今は何でも食している。

 高校生になったからとようやく親から携帯をもらい、当時流行っていた携帯サイトの運営を始めた。女子高生の私は、そこでもりもりと二次創作小説を書いては公開していたのだ。


 今でもそうなのだが、私は隙間産業というものが大好きだった。公式の話と話の間で、実はこういうことがあったんじゃないか、という考察を含めた小説を書くのが好みだった。

 そんなニッチな作品が、やたら受けた。同じように「自分はこう思うんです!」と同様のシーンから展開したお話を見せてくれる同志の作者さんもいた。

 それがまためちゃくちゃ勉強になった。同じシーンからの展開のはずなのに、全然違う話になるのだ。そしてこれが視点の切り替えというものなのだということに気がつき、視点主のキャラの違いでまったく別の話になる面白さを知った。


 また、二次創作の小説の中で話をきちんと終わらせるということも学んだ。

 今まで書いてきたファンタジー小説は書いたら書きっぱなしで終わってしまっていたが、しっかり起承転結をつけて終わらせる大事さを知った。ちりばめていた伏線を結末で回収するときの気持ちよさにも、ハマりにハマった。

 最近ではハリウッドの三幕構成が勧められているが、起承転結でも三幕構成でも最終的に読者に「面白かった!」と言ってもらえたらそれで大成功なのだと思っている。


 もうそのサイトの運営はしていないが、今でも場所だけは残している。推しサイトが消えた時に、「もうあの小説読めないじゃないかー!」と涙を流したことが多々あったからだ。

 時々「このサイトを残してくれてありがとう。何度でも作品を読めることがとても嬉しいです」というコメントを送られてくるのが心苦しく、そして嬉しい。

 もう数十年も前の作品をいまだに愛してくれている人がいるという事実が、私の筆を動かしている。

 

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