スマホゲームの低レアキャラに転生したので素材にされないように頑張る。
中且中
本篇
上篇
1.ゲーム、転生
街づくりゲームというジャンルがある。箱庭ゲーム、都市建設シュミレーションゲームとも呼ばれる。街や村を運営して、様々な設備をつくったり、住人を管理したり、ゲームにもよるが敵と戦ったりなどして、街や村を発展させていく。
ストーリーがある場合もあるが、ない場合もある。基本的には、住民が増えるに従って、設備や各種インフラをグレードアップさせていき、街や村を発展させる。もしも設備の設置が間に合わないと住民の不満がたまりゲームオーバーだ。イベントに対処したりしながら、どれだけ発展できるか、というゲームである。
世界観は、現代都市であったり、崩壊後の世界、宇宙、惑星規模であったり、小さな村を舞台にしたもの、ファンタジー、古代世界、など様々だ。
《sandbox》もそんなゲームのひとつだった。スマホゲーム。すでに文明が崩壊し、人類が滅亡してしまった近未来が舞台。地上には機械型知性体、モンスターが闊歩している。しかし、ある日、ある計画のもと地中深くに残された人類の遺跡が稼働した。計画の名は人類再生計画。人類滅亡から一定期間が経過すると発動される手筈になっていた。遺跡には人体を生産する装置と、人が生活していけるだけの最低限の設備が存在している。遺跡を管理するAIは計画の実現に向けて、保存されていた材料を用いて、人体生産装置を稼働させた……。
ストーリーはこんな感じ。プレイヤーはこのAIとなって、遺跡や人間を管理しながら人類の再生を目指す。物資は生産した人間を用いて、モンスターを倒して手に入れる。
だが、このゲームの魅力はほかにもあった。生産した人間、つまりキャラクターにあったのだ。このキャラクターは、人体生産装置からランダムで排出される。つまりガチャだ。基本プレイ無料のスマホゲームなので当然の帰結としてガチャシステムは存在する。
美麗なイラストで描かれたキャラクターたちは、人体生産装置、ようはガチャで入手することができる。その数は膨大で、一部の高レアキャラにはキャラクター専用イベントがあった。所得したキャラは、遺跡内部で生活し、プレイヤーはその様子を眺めることができる。モーションが凝っているし、季節ごとに衣装が違ったりもするので、眺めているだけでもけっこう楽しい。
PCゲームにはどうしても劣らざるを得ないクオリティをキャラの魅力で補った《sandbox》は、ほとんどのゲームが一年ももたずにサービス終了するスマホゲーム界隈において、爆発的な人気は得ずとも、それなりに高い評価を得ながらサービスを続けていた。
そして俺もまた、《sandbox》のユーザーであった。ゲームはそこまで好きではないが、暇つぶしにはやっていた。基本的には放置ゲームで、毎日ログインする必要もないこのゲームはなかなか俺の性にあっていたようで、リリース当初からなんだかんだ今日まで続けている。
少し前にはアニメもやっていてなかなか好評だったし、そろそろサービス開始から二年をむかえる。スマホでニュースを見ていると、広告が流れて、そう言えば、ここ数日忙しくてアプリを開いていなかったことに気がついた。
アプリを開く。するとリリース二年記念とのメッセージと、十連ガチャ素材が送られていた。
「お、太っ腹だな」
思わずつぶやく。ホーム画面に移動する。基地の俯瞰がうつしだされ、デフォルメされたキャラクターが基地内を歩いたり、食事をしたりしている。人体生成施設をタップ、するとガチャの画面になる。十連をタップ。
壮大なBGMが流れ、キャラが排出される。結果は全て所持しているキャラ。しかも最高レアは出なかった。被ったキャラは自動で強化素材や他の素材に変換される。
……しかし、このゲーム、キャラを売却する時に、悲鳴みたいな声がするのだけはやめてほしいな。なんとかならないのだろうか。そりゃ、キャラを素材にするということは、現実的に考えればグロいことになってるのは当然なのだが。そんなところにこだわらなくとも、とは思う。
ガチャを引き終わると、なぜだか眠くなってあくびが出た。まだ昼なのだが、睡眠不足だろうか。たまらずベッドに横になる。ふっと意識が消失する。
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