第3話 オンラインゲーム

 ネットでゲームをやっていてふと思い出した。


 まだインターネットが普及していなかった三十五年前。

 アメリカで大規模な宇宙戦争物のオンラインゲームであるメガウォーズがサービスされたことがあった。この手のゲームの走りと言ってもよい。

 グラフィックこそ幼稚であったが、参加者は宇宙船の主となり、惑星や星域の支配権をかけて同盟を組んで戦う。そして巨大勢力となったプレイヤーがシステム全体を統括する帝国軍を倒したときワンクールが終了して、新しい世界が始まるという内容は複雑で精緻なものであった。

 ユーザーは直接そこのサーバーが公開している電話番号へつなぎ遊ぶ方式であった。

 日本のユーザーも参加できるが当然ながら国際電話でつなぐことになるので電話料金が半端ではない。


 ちょっとした好奇心でつないでみたある人がたちまちにしてこのゲームにのめり込んでしまった。初めて遊ぶ多人数戦略戦術ゲームである。嵌らないわけがない。

 いけない、いけないと思いながらも、もうちょっとだけ、後少しだけと遊んでしまう。

 一か月経った頃にはすっかりと諦めがついてしまい、そのまま三か月の間、寝る間も惜しんで遊び続けた。

 三か月目になると電電公社から最初の一か月分の電話代の請求書が届いた。その額なんと三百万円。今で言う一千万円ぐらいの価値か。

 このときのために準備していた通りに、彼は夜逃げを敢行した。


 今も昔もゲームのやりすぎは人生を破滅させる。

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