短編
彼は、注文した商品を乗せたトレイを持って、空いていた私の隣の席に座った。財布をしまって、紙のカップに入ったドリンクを一口飲む。
すぐ近くにいる彼が一体どんな人物なのか気になって、つい興味本位で「なに飲んでるんですか?」と、聞いてしまった。
「え、これっすか?普通にブレンドコーヒーです。ここのコーヒー美味いんですよね」
変わらない笑顔で応えてくれた。
「俺、ここのカフェお気に入りでよく来るんすけど、お姉さんたまに見掛ける気がします」
「え、本当ですか?」
そんなことを言われても、全然、気付かなかった。
「いつも美味しそうに食べてるのが印象的で。幸せそうな人だなぁ、と思って見てました」
また、あの眩しい笑顔を向けられる。
「え、本当ですか?」
私は、再び同じ返答を繰り返す。
そんな姿を誰かに見られていただなんて、恥ずかしい。
「あぁっ!誤解しないでくださいよ?俺もここのコーヒーが好きで通ってるだけなんで……」
なぜか言い訳を続ける彼がおかしくて、ふはは、と思わず笑ってしまった。
「なんで弁解してるんですか」
「あ、いや……。あと、いつも本読まれてますよね。
どんな本読んでるのかなーって、気になってました」
「めっちゃ見てますね」
私もつられて、照れたように笑った。
「俺も本好きなんで、気になってて……」
「今は、これ読んでます」
掛けてあるブックカバーを取り外して、本のタイトルが見えるように表紙を見せた。
「へー!その作家さん面白いですよね。俺もシリーズで読んだことあります」
「そうなんですよ!どんどん物語に引き込まれていって面白いですよね!」
誰かに共感して貰えたのが嬉しくて、思わず気持ちが昂ってしまった。
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