雨の日のカフェで君に恋をする

藤井

短編


 

仕事が早く終わると、いつも帰りに立ち寄る、お気に入りのカフェがある。


洗練された空間と、ゆったりとした雰囲気の店内が過ごしやすくて気に入っている、居心地の良いルノアールカフェ。


いつもの定番のラテと、その日の気分で選ぶスイーツ。

今日は季節限定のフルーツタルトにした。

頭を働かせたあとの糖分摂取は格別だ。


んー、美味しい。


思わず顔がほころぶ。






外は降りしきる雨。窓ガラスに雨粒が滴る。


でも、こんな日に室内でまったりする時間も好きなので、雨の日も悪くないな。とさえ思えた。



読みかけの小説を鞄から取り出し、ページを開く。



物語に入り込んで読み耽っていた時、背後から小銭が床に散らばった音がした。



「ああっ!」



後ろを振り向くと、財布を持った男性がなんだか取り乱していた。

結構な広範囲で小銭をばら撒いてしまったようで、拾ってくれた方達に対してペコペコ頭を下げている。



「すいません、すいません」



なんとまあ、また派手な。

私の足元に転がってきた小銭を拾い上げ、落とし主に渡した。



「すみません、ありがとうございます!」



すると、笑顔でお礼の言葉が返ってきた。


笑うと三日月のように細くなる目が印象的で、一瞬ドキっとしてしまった。



なんだろう、この人。


彼の笑顔には、相手を一切嫌な気持ちにさせない特殊な能力がある気がする。


そんなことさえ思った。



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