第3話 ジッセン【ASMR】/背後から梨穂子の声が……

○茶道部部室・居間(夜)

   SE バサッと布を被る音

   #梨穂子、どてらに袖を通し、頭から被る。


梨穂子

「私が後ろの役でいいかな?」

「私が難しいことしたほうが、先輩をたちも驚いてくれる気がするんだ。」

「手伝ってくれるあなたも、じっとしてるだけのほうが楽だと思うし。」


「……動けなくてヒマだからって、変なことしちゃダメだよ?」


   SE バサッと布が被さる音(頭の後ろから首元あたりで)

   #梨穂子の声、耳の後ろ~首元あたりから聞こえてくる。


梨穂子

「えっと……こんな感じかな……?」

「(小声で)わっ……背中、近い……。」

「(思わずつぶやく)昔からずっとこの匂い……。」


「……あ、あはは! なに言ってんだろう、私!」

「ま、真面目にやらないとだよね! うんうん!」

「え?イタズラ?私は誰かさんみたいなことしないんだから!」


「練習にならないでしょ!」


   SE ゴソゴソと布が擦れる音。

   #梨穂子、主人公の両脇から手を伸ばし、こたつの上に置いた茶碗とお箸へ手を伸ばす。


梨穂子

「あれ、あれ? お茶碗とお箸は?」

「え? 左手をもっと右? あーっ、あったあった。」

「てことは、お箸はこの横だね……よし、持てた!」


「それじゃ、まずはご飯を食べるマネするね。」

「えーっと……お茶碗を持ち上げて……」


   SE お茶碗とお箸がぶつかる音。


梨穂子

「あれ……あれれ? お茶碗、どこいっちゃったんだろ……?」


   #梨穂子、主人公の頭の横からひょこひょこと顔を出す。

   #左右の耳側から、交互に声が聞こえてくる。


梨穂子

「ん~? おかしい……。」

「お茶碗、この辺だと思ったのに……。」

「お箸とぶつかっちゃう……。」


「ねえ、私の手の位置、変じゃないよね?」

「間違ってたらちゃんと言ってね?」

「え? 《お箸を持った手をそのまま上げて》……?」


「わかった。えっと、右手を………。」


   #梨穂子、右手を上げる。

   #主人公、口元まで上がってきた梨穂子の右手の指を咥える。

   #梨穂子、驚きの声を上げる。


梨穂子

「ひゃっ!?」

「えっ、なになになにー!?」


   SE どてらをずらす衣擦れの音

   #梨穂子、主人公の頭の右側から顔を出して様子を確かめる。

   #右耳のすぐ側で梨穂子の声が聞こえてくる。


梨穂子

「あー! 指噛んでる!?」

「変なことしちゃダメって言ったで――」

「え? 《リラックスさせようと思った》……?」


「そ、そんなこと考えてくれてたんだ……。」

「でもね、急に指を咥えられたらびっくりしちゃうよー。」

「《指がお箸に見えた》って……そんなわけないでしょ!」


「へ……? 《白くて細くてすべすべで、高級お箸みたいだったから、思わず》?」

「……ま、またまた~……そんなことないって~」


   #主人公、今度は梨穂子の指を軽く舐める。

   #梨穂子、またしても驚きの声を上げる。


梨穂子

「ひゃあっ!」

「……も~! 噛むのはダメだけど、舐めるのはもっとダメ!」


   #梨穂子、主人公の耳元に顔を近づけ、抗議する。


梨穂子

「そっちがそういうことするんなら……」

「私だって、こうしちゃうんだから!」


   #梨穂子、主人公にぎゅっと抱きつくと、咥えられた指で主人公の舌をギュッとつまんで引っ張る。


梨穂子

「イタズラしちゃう悪い子は、舌を抜かれちゃうんだからー!」

「イヤならごめんなさいって言いなさーい!」



《第4話へ続く》


★mimicle(ミミクル)にて配信中★

『ASMRボイスドラマ アマガミ Vol.1 桜井梨穂子編』(CV・新谷良子)

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る