39話  ブリーフかトランクスか

 男子は、いつ、ブリーフを履いて生きていくか、トランクスを履いて生きていくかを定めるのだろうか。


 Mが大層な行き遅れとなって縁づいた殿方は、トランクスであった。

 若君を授かり、襁褓むつきが外れ、さて、男児の下着をというときにMは海外通販に、はまった。

 取引先は、かの、じんぼりーである。

 その男児下着はブリーフであったため、ずっと若君はブリーフを履いて成長していった。

 もし、途中で若君が、「われはトランクスが履きたいのじゃ!」と、涙ながらに申し立てれば、「そうであったか。すまなかった」と、Mはトランクスを用意したことだろう。しかし、若君は異議を唱えることなく、じんぼりーを卒業し、ぐんぜ、ゆにくろ……と、ブリーフ(ボクサー)どうを歩む今。

 母は、息子のトランクスを履いて生きていく未来を摘んでしまったのではないかと、かすかな迷いを含む。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る