25話  ぼっちの魔女のところへ王子さまがやってくる

 その、ぼっち(ひとりぼっち)の魔女は、森に隠遁いんとんしていた。

 ここ数年は欲求不満の解消に、そこらにある素材で、おはなしを編んでいた。

 編んだおはなしは、森の木の枝に飾っておいた。


 ある日、ぱからぱからとひづめの音がするので窓からのぞくと、見目好い青年が栗毛の馬にまたがっている。

「こんにちは。君、近況ノートのコメント欄、閉じているから来たよ。ここ、スタンプラリーの通過点にするからね」


「ス、スタンプラリー?」

 魔女は、青年の頭上に金色の星の冠が、またたいているのに気づく。

(あの星は詠み人ヨミビトのしるし)

 こんな森の奥に詠み人が来ることなど、滅多ない。


「これをあげておくね」

 青年は魔女にスタンプラリーの台紙を1枚、さしだしてきた。

「説明、書いておいたから裏も読んでね」


 はがき大の台紙には、ぼっちの魔女の住まいを含めた、いくつかの場所がイラスト入りで明示してあった。

(え。行ったことある場所です。行こうと思っていた場所です)

 台紙の裏を返すと、つまりは、

『ぼくがいいなと思った、森のおはなしを巡るスタンプラリーを作ってみたよ。〈嫁入りからのセカンドライフ〉の企画を楽しもう!』ということだった。


「全部、巡ったらご褒美をあげるよ」

 青年のほほえみに、上気した魔女は叫ぶ。

「それ! とかですよねっ。絶対、王子の、とかですよねっ!」


 魔女は今日も安定の、欲求不満だ。






 ※拙作『氷結魔導士のはやすぎるいろいろ』を

  スタンプラリー企画に呼んでいただきました

  その時の気持ちを完全無許可で おはなし仕立てで つづってみました

  なお キャラクターの口調などは創作であります

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