7話  若君の知らない文字

 ある日、我が家の若君宛てに多少分厚い何かが届いた。

 出版社からだ。


「読者コーナーに投稿したら、採用された」

 うれしさを隠せない若君。


「これ」と、添えられた、お手紙まで見せてくれる。

 単なる活字で印刷されたものだが、よほど、うれしいのだろう。

 それは、〈拝啓〉と、定型文ではじまっている。


「すごく堅いイメージがあったけど、〈〇〇出版〉の人ってフレンドリーなんだね」

 若君が、その無垢な瞳でみつめる文末。


 〈草々〉。


 そのときMは、果てのない答えのない子育てという海に自分は一人ぽつねんと浮かんでいるのだと気づいた。


 この若君は〈草草〉=〈ww〉と――。


 Mは、口の中がカラカラになったまま。

 告げなければならない。真実を。


「ちがうんだ。それは――」





〈告知コーナー〉『観音さまと夏の雪』 byミコト楚良

        https://kakuyomu.jp/works/16817139557073401069

        時代・歴史・伝奇カテゴリの短編

        とある山間の地に伝わる観音様の霊験

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